スカーレットが人間界へ行ってから1週間が経過した。
事前に様々な準備をしてくれてはいたものの、不安で仕方がない。
私の心の平安のためにも、早く帰ってきてくれないかな。
スカーレットの出発前に推挙され、新たに家臣となったリナリスが私に魔法の手ほどきをしてくれることになった。
指導を受けるにあたり、改めて魔法の適正を確認してみたのだが、土属性が若干マシな程度で他の属性は全て平均以下という結果に……。
火球をバンバン飛ばすカッコイイ魔法使いに憧れていたけど、私には地味な土いじりしかできないのかな。
「何か見落としている気がします。陛下の魔力は決して低くないはずなので、もっと適正があってもいいように思うのです。スカーレット様が戻られたら相談してみます」
などと、リナリスが気休めに言ってくれる。
土属性の魔法は壁を作るのがメインなので、当面は訓練を兼ねて壊れた防壁の修復を行うことにした。
父上が亡くなってから、何度も襲撃に遭っているので防壁のありがたさを強く感じている。
そして、やはりこの瞬間がやってきた。
そう、襲撃だ。
「陛下!賊の襲撃です。頭領はカイリシャと見られます」
カイリシャか……。
スカーレットがいない、このタイミングで。
いや、ここで諦めたらダメだ。
なんとか乗り切ることを考えよう。
「分かった。すぐ行く。門を閉じ、絶対に町へ入れるな!死守せよ」
私はセリアナの鉢金を頭に巻いた。
セリアナ……私に力を貸してくれ。
私が城門に駆けつけると、既に防衛部隊が必死の抵抗をしていた。
だが、賊の数は予想を上回り、新参兵がほとんどの我が軍は苦戦を強いられていた。
私は賊の中にカイリシャを見つけ、城壁の上から叫ぶ。
「逆賊カイリシャ!父上の恩を仇で返すとはどういうことだ。恥を知れ!」
「黙れ!貴様こそ、人間界などと和睦するなど魔界の王としてあるまじき行為ではないか。私こそ王に相応しい!」
「お前が山賊になったのは私が人間界と和睦するよりも前だぞ。お前の目的は王位を簒奪することであって、民を守ることではない。ここにいる全ての兵よ聞け!この者は魔界を戦争の絶えない国にするつもりだぞ、それでも支持するのか!」
「あのような小娘の言うことを信じる必要はない。奴の首を取ったものには好きなだけ褒美をとらせるぞ」
「皆見ておけ。カイリシャは金と権力のために戦争を煽る者だ。奴に正義などないことは明らかだろう」
私がそう言うと、賊の勢いがなくなったように感じた。
これなら守りきれるかもしれない。
「陛下、さらに新手がやってきています!」
兵士が指差す方向を見ると、確かに砂煙が見える。
これは味方なのか、敵なのか……。
いや、私に味方をしてくれる他の勢力を知らないし、どこにも救援要請をしていないはずだ。
だが、その勢力は山賊軍に向かって一直線に突撃を始めた。
山賊軍は散り散りになり、降伏するものが相次いだ。
カイリシャは逃してしまったが、撃退には成功した。
これは一体、何が起こっているんだ?
「グロリア!遅くなった!」
中心で指揮を執っていた男が大声で叫んだ。
そ、その声は……まさか。