戦争は終わった。
私たちは戦後処理をゾルガリスと親衛隊臨時隊長のダリクに任せ、帰還した。
北部地域は元々ヴァルゴンの勢力下だったこともあり、強い将軍に従いやすい気質があるようなのだ。
王都に帰還した私は、真っ先に論功行賞を行った。
論功1位は、スカーレット、ゾルト、カイル君としたが、彼らは謙遜して報奨を辞退し、王都の再建に尽力することを選んだ。
ゾルトは以前からの希望通り、親衛隊への復帰を求めてきたため、論功2位のレスタリオンをマジェスティアの太守に任命した。
カイル君の希望は『ゾルテスと一緒に武者修行の旅に出たい』だった。
希望を聞いてあげたいところだけど、新たにお願いしたい仕事があったため、一時保留とさせてもらった。
戦争中に起きた出来事と言えば、光属性を持つ人が2人見つかったことだ。
光属性の存在が確認されたことで、魔界改造計画の進展が期待される一方、魔界における光魔法の不足が問題視されていた。
そのため、人間界から光魔法の魔法書を取り寄せるなどの手配が行われていた。
彼らに光魔法を覚えてもらえれば、計画が加速するはずだ。
問題は魔界には光魔法が私の魔法しか存在しないことなのだが、商人を通じて人間界から光魔法の魔法書を入手してもらうように手配している。
魔法といえば、医療魔法も完成間近となっている。
アメリアはベルモント殿の治療に専念していたのだが、戦争で負傷者が増えたため、医療魔法を使う場面が増えたようだ。
医療魔法の開発が進展し、アメリアの手によって多くの負傷者が回復を遂げていた。
この成果により、戦後処理における医療支援も大きく前進し、王都の治安が安定していることが報告されていた。
今日は戦後処理も落ち着いてきたので、王宮病院に顔を出そうと思っている。
「陛下、いらっしゃったのですね。見てください、ベルモント殿が歩けるようになったのです!」
入院していたベルモント殿の所に行くと、スカーレットがベルモント殿と談笑しているところだった。
スカーレットは私に気づくと、嬉しそうに回復の報告をしてきた。
えっ、スカーレットってこんな顔で笑うことってあるんだ……。
長い付き合いだけど、こんなに柔らかい笑顔を見ることはめったにないと思う。
「ベルモント殿、随分良くなりましたね。そろそろ退院でしょうか」
「全快したようで、本日退院となりました。それで、その……あとでご相談に乗っていただきたいのですが、お時間よろしいでしょうか」
ベルモント殿がそう言うと、スカーレットが赤くなった顔をして俯いた。
これは……!
そうか、スカーレットもなかなかやりますなあ。
「このあとアメリアと話をしてくるから、その後で良ければ。2時間後に私の執務室まで来てちょうだい」
「承知しました。ありがとうございます」
ベルモント殿が頭を下げると、スカーレットも無言で頭を下げた。
もう確定じゃないの。
――
「あ、まっぴー。何か良い事でもあった?キモいくらいニヤニヤしているけど……」
アメリアは私の顔を見るなり、キモいと言ってきた。
口の悪さは相変わらずだけど、しっかり手は動いている。
アメリアの両手からは橙色の光が出ていて、患者の負傷部位を包みこんでいる。
ゆっくりではあるけど、目で見ても分かるくらいの速度で傷口が癒えていくのが見える。
「凄いわね……みるみる回復しているじゃない。もう完成と言ってもいいのかしら?」
「基本的な部分は完成してるよ。まだ改善できるとは思うけど、こういうのはキリが無いからね」
「では、基本部分だけでいいので、術式を書面にまとめてもらえるかしら。1週間後、王都にカイル君が来るのだけど、それまでにできる?」
カイル君はゾルト一家と一緒に、王都へ引っ越すこととなった。
屋敷を用意しているので、アメリアと一緒に住めればいいなと思っている。
もちろん、理由はそれだけではないのだけど。
「おけまるー。そういえばカイル、勇者になったんだよね……ウチら兄妹、もしかして国の英雄な説ある?」
「えっと、説あるコアトル……」
「うえーい」
アメリアの言葉はまだよく分からないのだけど、若干理解できるようになってきた気がする。
まあ、覚えたところでアメリアとの会話以外では全く役に立たないのだけど。
――
その後、執務室に戻った私は決裁書類に目を通していると、スカーレットとベルモント殿がやってきた。
ふふふ、待っていたよ。
聞かせてもらおうじゃないか、胸焼けがするほどの甘い話を!