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第62話 作戦開始!

 あれから2週間が経過し、いよいよその日がやってきた。

 宇宙海賊との決戦の日だ。


 俺たちが準備をしている間、破壊ロボットはヨーロッパの主要都市を壊滅させ、東アジアにまで到達していた。

 戦いの舞台は香港。ここで倒しきれなければ、次は日本にやってくるだろう。


 俺は戦闘服に着替えて、ステラ・ヴェンチャーの会議室にやってきた。

 既に全員揃っていて、俺を待っていたようだ。


 今回は二階堂氏も参加している。

 サクラ氏と共に突入作戦を行うためだ。

 彼をどこまで信用していいのかは、意見が分かれるところだけれど、とりあえず味方として考えることとなった。

 最悪の場合を想定して、戦闘服に仕掛けはしてあるけどね。


「よし、全員揃ったようだな。これより作戦を伝える」


「その前に一応言っておくけど、今回は進も作戦に参加するから、そのつもりでね」


「皆さん、よろしくお願いします。私の仇討ちに協力してくれたこと、感謝しています」


 サクラ氏に紹介される形で、二階堂氏が挨拶をした。

 ナミ氏とハカセは初顔合わせだったはずだ。


「では、まず地上作戦から。ガンガルMkⅡで破壊ロボットを停止させる。担当はナミとカトーとする。具体的には、破壊ロボットの内部にナミが侵入し、停止させる」


「イエッサー!」

「りょ」


「破壊ロボット停止作戦開始後、敵戦艦突入作戦を行う。担当はサクラ、二階堂さん、イチローとする。突入タイミングは私が指示する」


 いよいよ、俺が参加する作戦だ。

 身が引き締まる思いだ。


「第一目標は人質の解放だ。人質に小型ドローンを忍ばせているので、転送位置は人質の場所となる。まずはイチローが彼らを転送装置で救出する。救出した人質の対応はナカマツとハカセに任せる」


「イチロー、頑張ってね……」


 ハカセが心配そうな顔で俺を見ている。

 約束通り、絶対に生きて帰らなければ!


「人質解放後、二階堂さんの能力で強い敵を探し出し、宇宙海賊の首領を討伐、その後戦艦を破壊して終了だ。いいか、絶対に命を粗末にするな。全員生きて帰ることを最優先としてくれ」


 会議は解散され、各自持ち場に散っていった。

 カトー氏とナミ氏がガンガルMkⅡに搭乗し、いよいよ作戦開始を待つだけとなった。


 現在、香港では軍と破壊ロボットが交戦をしている。

 この戦闘が終わり次第、作戦開始だ。


 船内にはいたるところにモニタが設置されていて、どこにいても戦いの様子を見ることができる。

 やはりというか、破壊ロボットが一方的に軍を叩き潰すかのような勝利となった。

 こんなのを相手に、ナミ氏とカトー氏はどう戦うのだろう。


「作戦開始! ガンガルMkⅡ転送……3……2……1……」


 モニタにガンガルMkⅡが映る。

 いよいよだ。


 ――


「カトリン、いくよ! ウチがいいと言うまで射撃は待って」


「おう、上手く躱してくれよ!」


 ナミが操作するガンガルは、破壊ロボットが放つビームをギリギリのところで躱しながら、接近戦に持ち込もうとしている。

 俺は破壊ロボットの腕を各個撃破すべく、射撃のタイミングを図っている。


 ナミは破壊ロボットの周囲を高速で回ったあと、間をすり抜けていった。

 一歩間違ったら、ただ事ではすまないだろう。

 本当にナミの度胸には恐れ入る。


「カトリン、射撃いいよ」


「よし、任せろ」


 ナミの動きの意味がやっと理解できた。

 破壊ロボットは触手のような腕を4本持っているのだが、ナミはこれらが絡まるように逃げ回っていたのだ。

 頭では分かっていても、実際にできるかは別の話だ。

 4方向から同時に攻撃されるのを躱しながらなのだから、とんでもない判断力だということが分かる。


 たとえ4本あろうが、絡まってしまえば1本のようなものだ。

 俺は触手の先にあるビーム砲台を次々に撃破していった。


「カトリン、グッジョブ! これで安心して内部に侵入できるね。ってことで、粘着液散布いっくよ~」


 内部に侵入するには、ハッチに穴を空ける必要がある。

 そこで考えた方法は、粘着液をハッチ付近に振りかけ、そこに向かって転送モジュールをばら撒くというものだ。


 どういう訳だろうか、破壊ロボットの動きが急に遅くなった気がする。

 おかげで、粘着液と転送モジュールのばら撒きが簡単に成功した。


「ハカセ、今だ!」


「了解!」


 ハカセの返事と共に、破壊ロボットの背中に穴が空いた。

 内部が見える!


「上手くいった! カトリン、アンカーで固定だ」


「よし、アンカー装填OK。発射!」


 背中の穴から侵入する際、外から攻撃を受けないよう、ガンガルを破壊ロボットの背中に固定することとした。

 その固定に使用するのがアンカーだ。


 無事アンカーで固定できたので、ビームバリアを全面展開をした。

 これで、外側から攻撃されても耐えることができるだろうし、穴の空いたハッチをガンガルで蓋をすることができた。


「今のところ上手くいってるね。じゃあ、ウチはこれから内部に侵入して停止作業に移るよ。カトリン、ガンガルをよろしく」


「ああ、行って来い。っと、その前に……」


「ん? どしたん?」


「ナミ……この戦いが終わったら、俺とゆっくりデートでもしようぜ。だから……絶対に生きて戻ってこい!」


「ん~どうしよっかな。……うん、分かった。楽しみにしとく」


 ナミはニコッと微笑むと、工具の入ったバックパックを抱えて、穴に入っていった。

 俺はその姿を見送ると、ガンガルのコックピットで周囲を警戒した。


 いや、ちょっと待てよ……。

 よく見たら、触手が自動再生を始めているじゃないか!

 すごい速度で再生しているので、ナミが戻る前に再生を完了してしまうかもしれない。

 そうか、急に動きが遅くなったのは、再生にリソースを割いていたためか……。


 さらに最悪なことに……。50機ほどの円盤が空に現れたのだ。

 そして、ガンガルに向かって一斉射撃を開始した。

 まずい、これはバリアが持たない!


 やられる!

 そう思ったときだった。

 ビームライフルの音が聞こえた。

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