「いやあ、今日も食べたなあ。料理も美味しくて、賞金まで貰えるんだから、2つの意味で美味しい挑戦だよな」
私は、進と大食いチャレンジを続けている。
でもね、最近私たちの噂が広がっているらしくて、時々追い返されることがあるのよね。
そんなことなら、大食いチャレンジなんて企画しなきゃいいのに。
今日はラーメンの大食いに成功した後、カフェでゆっくりくつろいでいた。
プルルルル……。
あ、ボスからだ。
「ごめん、ちょっと電話出るね。はい、こちらサクラ……。えっ、それは本当なの? 分かった、すぐ戻るわね」
「どうした?」
「今、ロンドン上空に巨大な宇宙船と、無数の円盤が出現したって……」
「それって、まさか……」
私はスマホで情報を検索してみる。
あった、この映像だ。
宇宙船と円盤は下部が開き、何かを散布しているように見える。
それを阻止しようと、イギリス空軍が出動したようだったけど、あっと言う間に全滅させられた。
この武器は実弾兵器ではなさそうだから、レーザー兵器だと思われる。
だとすれば、やはり異星人による攻撃だ。
「どう? 見覚えある?」
「この船……間違いない、奴らが現れたんだ!」
やはり……。ずっと進が言っていた宇宙海賊が本当にやってきたんだ。
私の大事な人たちの命を奪ってきた、許せない相手だ。
「ごめん、進。今日は一旦戻るね。また後で連絡をするから!」
「分かった。連絡を待っている。君の仲間たちにも、俺も戦うと伝えてくれ」
――
「サクラ、遅い!」
私が船に戻ると、既に全員が会議室に集合していた。
スクリーンには、さっき見た映像が流れていた。
「ごめん。それでね、進にも聞いてみたんだけど、やっぱり例の宇宙海賊で間違いないって」
「そうか……ついにこの日が来てしまったか。皆……戦う覚悟は出来ているか?」
ボスの呼びかけに、ハカセがすっと立ち上がった。
その顔は真剣そのもので、強い決意を感じる。
「ボス、私やるよ。私や皆の大事な人たちの仇討ちだもん」
「俺もやるよ。俺は地球でずっと生きていくんだから」
「俺もだ。毎日訓練してきたのはこのためだからな」
「ウチもやるよ。二度もウチらを襲うなんて、ふざけんなし!」
「私もやりますよ。医師としても、奴らは許せない」
皆が決意を述べていく。
ハカセの決意が、皆の心に火を付けたのかもしれない。
私だって、同じ気持ちだよ。
「おっと、皆に先を越されてしまったな。こっちには宇宙最強のサクラ様がいるんだぜ、これはもう勝ったも同然だよな」
「そうだ、サクラ氏がいるんだ! それにガンガルだってあるんだ。負けるはずないじゃん」
「皆の決意はよく分かった。だが、油断は禁物だ。船も向こうの方がはるかに大きいし、円盤の数を見れば分かるように、人数だってこちらが劣っているんだ」
「それを上手くやる戦略を立てるのが、ボッスンの仕事じゃんね」
「ふむ。まず、現状確認をしよう。奴らは映像を見れば分かるとおり、ロンドン上空から何かを散布したようだ。これは、例の殺人ウィルスの可能性が高いと思うのだが、ナカマツはどう思う?」
「そうですね。殺人ウィルスで間違いないでしょう。しかし、我々はこれを見越して、既に弱毒化した改造ウィルスを世界中に散布してあります。地球人には免疫ができているので、被害はほとんど出ないでしょう」
ナカマツの言う通り、私たちは改造ウィルスを世界中に散布している。
一時的に世界中で謎の熱病が流行したのだが、致死性が低かったこともあり、ただの風邪だと思われていたようだ。
だが、私たちから見れば、地球人全員に予防接種を受けさせたようなものだ。
「うむ、奴らも結果を知ったら慌てることだろう。その混乱に乗じて先制攻撃を仕掛けたいところだが、情報が少なすぎるので、一旦は相手の出方を伺うしかなさそうだ」
「こっちから先に仕掛けるってのはダメなの? 主砲を撃ち込めば大打撃を与えられるような気がするんだけど」
「それは賭けだな。相手にビームシールドがあって防がれてしまった場合、戦艦同士の撃ち合いになる可能性がある。そうなると、戦力的にこちらが不利だと思う」
「そうかもしれないわね。さっき見た映像でも円盤型の兵器が相当数出てきているし、撃ち合いとなると確かに難しそうよね。何らかの方法で敵戦艦に潜り込み、白兵戦に持ち込むというのは?」
「その何らかの方法が、今のところ見つかっていないのと、敵戦艦が広すぎて敵の位置を探し出すのが難しいだろう。全長だけでもこっちの倍以上の大きさだからな」
「私にいい考えがあるわよ。初めて進と会ったとき、彼は私の闘気を感じて会いに来たんだって。ということは、彼には敵の居場所が分かるんじゃないかしら」
「つまり、サクラは二階堂さんと一緒に、敵戦艦へ潜入すると言いたいのだな?」
「そうね。戦闘力的にも最適だと思うけど」
「二階堂さんを疑いたくはないが、万が一敵のスパイだったらどうする? サクラを危険な目に合わせる訳にはいかないんだ」
身の安全を心配されたのは久しぶりね。
でも、私は彼を信じているし、この作戦しかないのは間違いないと思う。
「ボッスン、ウチにいい考えがあるよ。この間、ハカセちんと開発した戦闘服なんだけどさ、電気信号を送ることで硬化させることができるんだよ」
「どのくらい硬いんだ?」
「カトリンの怪力でも、全く変形しないほどだね。だから、この戦闘服を二階堂さんにも支給してさ、何かおかしな動きをしたらコントローラーで硬化させれば、いとも簡単に身柄を拘束できるという訳よ」
「それはすごいな。サクラ、その方法ではどうだ?」
彼が皆に疑われているのは残念だけど、ボスだってリスクを考えてのことだ。
進と一緒に戦えるなら、このくらいは仕方がないか……。
「分かったわ、それで行きましょう。あとは潜入方法よね……。さすがに正面突撃は危険すぎるかしら」
「なんとか、敵艦にスパイドローンを送り込めればよいのだが……。こればかりは、隙ができるのを待つしかないか」
まだまだ問題は山積みだ。
必ず勝たねばならない戦いだから、焦ってはダメよね。