- 治療開始から2年 -
特効薬の発見から2年が経過した。
意外なことに、治療を選択したのはハカセとサクラのみだった。
皆それぞれ思いがあるのだと思う。
例えば、カトー氏は二階堂氏が言う宇宙海賊との戦いを想定して、不老不死のままでいることを選んだようだ。
ハカセは治療が完了し、成長期に入ったようだ。
いつの間にか声も変わってきたし、顔立ちも大人っぽくなってきたと思う。
婚約者としては、日々が楽しみだ。
俺はナミ氏の助手となって、最新兵器の開発に着手している。
最新兵器……これは、ガンガルMkⅡと命名している。
ガンガル初号機は宇宙戦闘特化型なので、地上戦もできるオールマイティータイプが必要だと判断した結果だ。
もちろん、ガンガル初号機にもカスタムパーツで地上戦も可能にする改修を行っている。
「ナミ氏、MkⅡの近接戦闘データだけど、どうやって構築したらいいと思う?」
「難しいね。ガンガルは近接戦闘を想定していないからデータの流用もできないし……」
そう、MkⅡは地上戦も想定しているので、高い近接戦闘能力を持たせることを考えている。
粒子砲も装備しているが、射程が長くないので、やはりある程度の距離まで近づく必要もある。
「MkⅡがサクラ氏くらい動ければいいのにね」
「えっ? さっきゅん……それ、アリよりの有吉の壁じゃん」
「え、サクラ氏とMkⅡが戦うってこと?」
「そうじゃないよ。誰かとさっきゅんが戦って、そのデータをMkⅡに搭載するんだ」
「あ、そうか。それなら、サクラ氏みたいな動きができるってことか」
これは凄いことだと思う。
サクラ氏みたいなアクロバティックな動きができたら、近接戦は最強でしょ。
「問題は、誰がその役をやるかってことだね。カトリンじゃ、さっきゅんの本気を引き出すのが難しいんじゃないかな」
「あのさ、二階堂氏に頼むのってマズイかな? 現実的な話として、サクラ氏の次に強い人であることは間違いないんだよね」
「そだね。とりあえず、ボッスンに聞いてみよっか」
俺たちはボス氏に確認してみた。
あまりいい返事が期待できないと思っていたのだけど、何の問題もなく許可が下りた。
ボス氏が言うには、別にこちらの戦闘データを渡す訳では無いし、逆にこちらは二階堂氏の戦闘データを入手できるからだそう。
続いて、サクラ氏にも相談してみた。
「あ、別にいいよ。ボスの許可が出ているのなら、話が早いわね」
「ねえ、さっきゅんから聞いてもらっていい?」
「いいよ。じゃあ、早速聞いてみるね」
サクラ氏はスピーカーモードで電話を掛けてくれた。
プルルル……ガチャ。
「サクラ、どうした?」
「あのさ、ウチのボスがね、私の戦闘データがほしいって言っててさ、手伝ってくれないかな」
「えっ、戦闘データ……? 俺がサクラと戦うってこと?」
ちょっと待って。
なんか……やたらと親密な関係っぽい感じがするんだけど。
「そうみたい。進も私と本気で戦ってみたいって言ってたし、丁度いいかなって思うんだけど」
うわっ、進って呼んでるよ……。
「マジか! やるよ、是非やらせてください」
「じゃあ、決まりだね。日時が決まったら、また連絡するね。じゃあ、まったね~」
電話を切ったサクラ氏は、いつもと違っていた。
なんていうか、乙女の顔をしていた。
「サクラ氏……もしかして、二階堂氏と付き合ってるの?」
「そうだけど?」
「え……ボス氏はそれを知ってるの?」
「知ってるよ。っていうかさ、イチローは知らないんだっけ? 私、みんな知ってると思ってたんだけど」
「ちょ……マジで? ナミ氏は知ってるの?」
「知ってるに決まってんじゃん。っていうかさ、知らないのはイッチだけだったりして~」
そのまさかだった……。全員に聞いてみたけど、俺以外は全員知っていた。
サクラ氏があまり関わっていなさそうなナカマツ氏でさえ、ちゃんと知っていたくらいだ。
どうやら、大食いチャレンジを二人で荒らしているうちに、意気投合したということらしい。
「ひ、ひどい……」
「イチロー、すまないな。でもさ、イチローは私よりも、私の胸の方に興味があるのかと思ってたよ」
「えっ?」
「いや、いつも胸の方ばかり見てくるからさ、私自身にはそれほど興味がないのかなって」
ぎゃああああああ!
ナミ氏とハカセに言われてたやつだ。本当に気付かれていたのか……。
「……」
「私は別に気にしないけどさ、ハカセが怒らない程度にしておけよ……。なあ、ムッツリスケベ君!」
サクラ氏はニヤニヤしながら、自分の部屋に戻っていった。