目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第52話 はじけちゃった? コーラ星人

「帰ってきたぞ! 取り囲め~!」


 俺とハカセが帰宅したところを、みんなが待ち構えていた。

 俺はあっという間に取り囲まれ、上に放り投げられた。

 日本では、胴上げというものらしい。


「わっしょい、わっしょい!」


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 なにこれ、すごく怖いんだけど。

 終わったときには、もうフラフラで立っていられなくなった。

 日本人って、結構すごいことやるんだね。


「イチロー、大丈夫?」


 ハカセが駆け寄ってきて、俺を支えてくれた。

 でもさ、ハカセの笑い声……滅茶苦茶聞こえてきたんだけど?


「ダメだ……腰が抜けて動けない……」


「もう……だらしないなあ」


 ハカセが俺の腰に手を回し、起こしてくれた。

 って、いつまでしがみついているんだよ……。皆の前なんだぞ。


「いちゃつくのは、他所でやれ~」


「サクラ、ちょっと黙って……。イチローも動かない!」


「あ、はい……」


 ハカセが真剣な顔でそう言ったので、俺たちは黙ってハカセを見守った。

 難しい顔で、何かを考え込んでいたようだったが、しばらくして顔をあげた。


「イチロー、あなた太ったわよ。間違いないわ」


「いや、そんな訳ないだろ。大体、なんでそんなことが分かる?」


「それは……その……イチローには何度か抱きついていたからね……」


 そういえば、何度かあったような気がする。

 初めて会った日も抱きついていたし。


「でもさ、たまにだったよね。違いなんて分かるの?」


「分かるわよ。ナカマツ、ちょっと調べてくれない?」


「そうだね、調べてみれば分かることだ。でも、ハカセ君、そろそろ……イチロー君から離れたらどうだろう。彼、困ってるよ」


「あっ、ごめんなさい。いい匂いがするものだから、つい……」


 ハカセは真っ赤な顔をしながら、俺から離れた。


「イッチ~、『ツンデレ』だけじゃなく『変態』の属性も増えたじゃん。やったね~」


「ちょっと、ナミ! 変なこと言わないで。私がいつ変態になったのよ」


「イッチの匂いをクンクンしながら、嬉しそうな顔してたじゃん。変態で間違いなし!」


「ナミ、さすがにそれは言い過ぎだよ。私も変態だとは思うけど」


「あーん、サクラまで……」


 女子がわいわい騒いでいるのを放置し、俺はナカマツの診断を受けた。

 結果は……本当に太っていた!


 そんな馬鹿なことある?

 だって、俺は不老不死なんだぞ。


 ん? ちょっと待て……それって……。


「えっと……ハカセが言う通り、太ってました。割りとガッツリと……」


「ほらあ、私の言ったとおりだったでしょ! ねえ、皆……これが何を意味しているか、分かるわよね?」


「イチローは既に特効薬を見つけ、体に取り込んでいるということか!」


「そうよ、ボスが言う通り、イチローはもう見つけているのよ。念の為、全員検査をしましょう」


 検査の結果、体型に変化があったのは、俺だけだった。

 血液検査もしているので、もっと詳細な結果は3日後に持ち越しとなった。



 - 3日後 -


 血液検査の結果が出たということで、俺たちは船内の会議室に集合した。

 そして、ナカマツ氏から驚愕の事実が明かされた。


「イチロー君とサクラ君の血液を分析したところ、二人の不老不死が弱くなっていることが判明しました。不老不死の要因となっている超回復能力が、イチロー君が40%、サクラ君では30%ほどの減少が見られる」


「俺とサクラだけ? なんでだろう……」


「簡単よ、炭酸飲料が原因ね。イチローはコーラ、サクラはビールを浴びるように飲んでいるじゃない」


「なるほど、その可能性は高いな。だが、効き目はそれほど強くないようで確認は難しいと思う。イチロー君、サクラ君があれほど飲んでいるのに、この程度の効果しかないのだからね」


「そうね。私たちは『特効薬』という言い方をしていたから、飲んだらすぐに治るようなイメージだったけど、少なくともそうではないということよね」


「多分だけど、大量に飲み続けて少しずつ解消していくということだから、半分だけ治療するとか、そういうことも可能なのだと思う」


 皆が考え込んでいると、ハカセが立ち上がった。


「私から皆に提案があります。私は毎日強炭酸水を飲み続けるので、イチローは炭酸を禁止するというのはどうかしら?」


「いや、俺がコーラを飲めないだなんて、あまりに酷すぎない?」


「仕方ないじゃない、一番影響が出ているんだから。炭酸を絶ったイチロー、炭酸を飲み始めた私、炭酸を飲み続けたサクラを比べればハッキリすると思うのよ」


「イチロー、諦めろよ。代わりに私が飲んでやるから大丈夫だ」


 サクラ氏!

 くそう、自分は飲める側だからって、好き勝手言いやがって。


(イチロー、あとで大事な話があるの。だから、ここは受け入れてほしいの)


 ハカセが俺の耳元で、そう囁いた。

 何か考えがあるのだろうか……。俺はハカセを信じてみることにした。


「分かった。俺は結果が出るまで炭酸を飲まないことにする……。結果が出るまでだからな!」

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?