「イッチとハカセちんは、ゴールデンウィークは休みなの?」
ウチはちょっと気になることがあって、夕食のときに聞いてみた。
「私は学校が休みだから、ずっと家にいるよ。最近忙しくてナミの研究を手伝えなかったから、休暇中は思いっきりサポートするからね」
「あざまる。イッチは?」
「俺も学校は休みだけど、サークルの合宿があるらしいんだ」
やっぱりそうか、最近なんだかソワソワしているような気がしたんだよね。
イッチはアニメ研究会とかいう、イッチらしいサークルに入ったと聞いている。
「へえ、そうなんだ。そのサークルってさ、女子もいんの?」
「3人ほどいるよ」
「結構いるんだね。イッチが勘違いしないように先に言っとくけど、オタクに優しい女子なんていないんだからね。そう見えたとしたら、誰にでも優しいか、その子もオタクかのどっちかだからね」
「うわあ、聞きたくなかった。優しい子いるんだけどな……」
その発言を聞いて、ハカセちんが『ビクッ』となって反応した。
やっぱり気付いていたか。私も知っているんだけど、その子の正体は入学式の日に仲良くなった女子らしいんだ。
困っているところをイッチが助けたらしくて、もしかしたらイッチに好意を抱いているのかも。
「ハカセちんは、友達から誘われたりしてないの? ほら、何人もの男子から告白されているみたいだし、デートの誘いとか無いのかなって」
今度はイッチが『ビクッ』となって反応した。
やべえ、この2人面白すぎ。全く同じ反応してるじゃん。
「うーん……。誘いはあったよ、断ったけど。だってさ、今の私の姿を見て好きになるなんて、ロリコンに決まってるじゃない!」
「へ……へえ……、ハカセはモテるんだね……」
しどろもどろだよ、イッチ。
「い、イチローも、趣味を理解してくれる女子がいるみたいで……た、楽しそうね。合宿が盛り上がると……いいわね」
しどろもどろだよ、ハカセちん。
っていうかさ、2人共やっぱりお似合いだと思う。
イッチも、なんだかんだで、ハカセちんが気になってるじゃん。
私が笑いを堪えていたら、さっきゅんが滅茶苦茶怖い顔でこっちを見ていた。
――
「ナミ、さっきのアレはなんだ? 余計な事をするなって言ったよね」
夕食後、さっきゅんがウチの腕をひっぱり、無理やり船内の会議室に連れていかれた。
やっぱ、怒ってるっぽいね。
「でもさ、やっぱり背中を押してあげたいじゃん。さっきゅんだって、ハカセちんの応援をしてるんだよね」
「それはハカセ視点で見たらそうだけどさ、イチローだって私たちの仲間なんだぞ。イチローの気持ちだって大事にしなきゃ」
「さっきのイッチの反応見たでしょ。イッチだってハカセちんの事が気になっているじゃん。ウチはイッチの味方でもあるんだよ」
「そうだとしてもさ、イチローに頼まれた訳でもないのに勝手にやったらダメだろ。そういうのは余計なお世話ってやつだ」
「いや、イッチはハカセちんの事を絶対に選ぶよ。ウチはそれが分かっちゃったんだよ」
「えっ、本気で言ってるの?」
あ、またこのパターンか。やっぱり説明が難しいみたい。
「上手く説明できないんだけどさ、ウチには『ハカセちんとイッチが結婚する未来』が見えてるんだよ」
「なんだそれ、そんなの分かるわけないだろ。未来が分からないから、今を頑張ってるんじゃん」
「さっきも言ったけどさ、上手く言えないけど分かるんだよ」
「そうか……。ナミがそこまで言うのなら何か意味があるのかもしれないけどさ、それ……誰かに話した?」
「ハカセちんには話したよ。全然信じてもらえなかったけどね」
「そりゃそうでしょ。仮に未来が分かっていたとしても、ハカセに話したのは悪手じゃないかな。イチローの事を必要以上に意識して、また暴走するんじゃないかと、そっちの心配が大きいよ。実際、さっきも様子がおかしかっただろ」
ハカセちんの様子がおかしいのは、前からじゃないかと思うんだけど。
でも、伝わらないことは理解したから、しばらく大人しくしておこうと思う。