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第43話 あ、やばい。また登場人物が増えそうな予感

 春になり、私は高校生となった。

 イチローも無事に大学に合格したので、私たちは揃って新学期を迎えることになった。

 そして、今日は私の入学式だ。


 私は、数学で満点、国語と英語は残念ながら数問落としたのだけど、開校以来の最高得点で合格をしたということで、新入生代表のスピーチを行うことに……。

 こういう経験がないから不安なんだけど、ボスとサクラが保護者として出席するらしいので頑張らないと!


 教室に入ると、クラスメイトが一斉に私の方を見た。

 そりゃそうよね。私、明らかに子どもだもん。


 目が合った人には笑顔を返し、私は黙って席についた。

 私立の学校なので、お互いに知り合いというのはあまりないらしく、皆静かにしていた。

 この中から親友ができればいいんだけど。


 しばらくすると、担任の先生が入ってきた。

 近藤先生という、若い女性だ。

 担当教科は数学ということなので、ナミみたいな感じなのかしら。


 その後、入学式の流れとか学校生活についての説明を受け、いよいよ入学式となった。


 ――


「新入生入場」


 私は1年10組で並び順も最後の方(名字が藤原だから)なので、最後の最後の入場となった。

 ボスとサクラはすぐに見つけられた。

 あんな目立つ2人はそういないんじゃないかな。というかね、入学式にサングラス姿はさすがにどうかと思う。


「新入生挨拶。新入生代表、藤原博美」


 私が席を立って歩き始めたら……ざわめきだした気がする。

 私がかわいいから? それとも子どもっぽいから?


 マイクの前に立つと、急に静まり返った。

 えっ、何この空気?

 この会場の全員が黙って私を見てるんだよね?

 やばい……頭が真っ白になってきた。


「ハカセ!」


 その瞬間、イチローの声が聞こえた。

 いや、でも……イチローも大学の入学式だったはず。

 ということは、幻聴なの?


 そんなことを考えていたら、いつの間にか緊張が止んでいたことに気がついた。

 私は練習通り、挨拶文をすべて読み上げ、無事に入学式を終えることができた。

 あれは一体なんだったのだろう。


 ――


「藤原さん、挨拶恰好良かったじゃん。私、福井ももかって言うの。仲よくしてくれる?」


 教室に戻ったあと、前の席の子が声をかけてくれた。


「うん。ありがとう。なんて呼べばいい?」


「ももかでいいよ。私も博美って呼ぼうかな~。博美ってどこ中なの?」


「あ、私ね……。外国育ちなの。なので満足に学校行けてなかったんだ……」


「えっ、なんで? 外国だって学校はあるでしょ」


「えっとね、ずっと戦争をしていたし、病気で長いこと入院してたりしてね……そういう国もあるんだよ」


 戦争……。

 私がその単語を口にしたとき、クラス中が静まり返った。

 私、余計なこと言っちゃったかな?


「そっか、変なこと聞いちゃったね……ごめん。その分、高校生活を楽しもうよ」


「そうだね。これからよろしく」


「藤原さん、私もよろしく!」


「私も」


「私も」


 私とももかの会話を聞いていた子も何人かやってきて、私たちは友達となった。

 久しぶりに友達が出来て、私の気持ちは昂っていた。

 高校生活が楽しみだ。



 - 同時刻:イチロー -


 俺は大学の入学式に出席している。

 久しぶりの大学なんだけど、地球の入試は簡単だった。

 こんなことなら、もっと上位の学校にすれば良かったと後悔したのだが、とりあえずは学生生活を楽しもうと思う。


 そういえば、今日はハカセも入学式なんだよな。

 新入生代表で挨拶するみたいだけど、上手くやれているかな?


 退屈な入学式が終わり、会場から出ると、サークルの勧誘が待ち構えていた。

 俺は特に入るつもりがなかったので、軽くあしらいながら帰路につこうとしたのだけど、上級生に囲まれて困っている女子を見かけた。


「おまたせ! じゃあ行こうか」


「えっ、あ……はい……」


 俺はその女性の腕を掴み、上級生から引き離すように連れ去った。


「困っているみたいだったから、知り合いのフリをしちゃった。迷惑だったらごめんね」


「いえ、本当に助かりました……私、気が弱くて断れなかったので……」


「そっか。押しの強そうな上級生だったもんね。じゃあ、俺は行くね」


「あ、待ってください。私、西村宏美って言います。さっき入学式で見かけましたけど、同じ理工学部ですよね」


 彼女は連絡先を書いたメモを俺に渡してきた。

 俺はそれを受け取り、ポケットの中に入れた。


「同じ理工学部だなんて奇遇だね。佐藤一郎と言います。よろしくね」


 俺の大学生活も少しづつ動き出していた。

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