全員が――皮肉を込めるなら生きている全員が再び終結するまでに時間は掛からなかった。居間に集まった面々は例のごとくソファに着席し、渋い顔で押し黙っていた。
沈黙を破ったのはやはり文哉だった。彼の精悍な顔は蒼褪め、疲労をたたえた隈はいよいよ濃くなっていた。
「チトセが冷凍室で死んでいた」
彼は抑揚のない声でそう言った。静まり返った居間に響くその一言が、皆をひどく絶望的な気分にさせる。
「凍死だと思われる。何故……あんなところに」
続く文哉の言葉に答える者はいなかった。深い沈黙。重く息苦しい空気が続き、やがて狼狽えた声が、
「いるなんて……思わなかったから……」
ヒュウガだった。彼女は顔を歪め、唇を震わせ、
「私、冷凍室の中までは探さなくて……だってあんなところ……」
「俺たちから隠れようとしたんだろ」
ソファに深く背を預けていた東郷は、目を閉じて眉間に皺を寄せ、口惜しさと苛立ちが混じった声音で言う。それに反論したのはイズミだ。
「隠れるなんて……冷凍室は外側からしか開かないのですよ? そんな無謀な……」
「知らなかったんだろ」
「そんなはずありません」
「じゃあなんだ。誰か、チトセが中にいるのに気付かずに扉を閉めちまったとでも? そうなると、やっちまったのはお前らのどちらかだ」
東郷は苦々しく顔を歪め、イズミとヒュウガを交互に見た。イズミが唇をわななかせる。
「そんな……私たちはそんなこと……」
「だったらあれだ。ダチをやられたこいつらが、こっそりチトセを捕まえて閉じ込めたんだ」
落ちくぼんでぎらりと光る目が、今度はオレと伊織に向けられる。
「いいかげんにしないか。滅多なことを言うもんじゃない」
オレが否定の言葉を口にする前に文哉が批難の声を上げた。冷静さを保とうとしているが、彼も相当まいっているようだった。動揺のためか、膝の上の拳が微かに震えている。
「じゃあなんだってんだ、文哉。あの金属の重い扉が勝手に閉まってチトセを閉じ込めたってのか。まさか自殺だなんて言わねぇよなぁ」
「黙ってくれ、東郷。頼むから」
文哉は額の辺りを押さえて俯いた。
「俺は見たんだぞ、ちくしょう! 扉の内側が引っ掻かれてた。爪から血が滲むほど強く、何度も何度も……」
東郷は震えた声を噛み締めた。そしてダンッと強く足を踏み鳴らし、無言のまま立ち上がって居間を出ていった。誰も、止められる者はいなかった。
頭を抱えたまま絞り出すような声でやっと、文哉は言った。
「チトセの亡き骸は私と東郷で彼女の部屋へ運んだ。皆、私の不手際でいろいろと面倒を掛けてすまなかった。部屋へ戻って休んでくれ」
全員総出の捜索劇はターゲットの死という不本意な形で終わりを告げた。
おそらく、その場にいた全員がまだ、矛先の定まらない疑惑を胸中に燻らせていたことだろう。しかしながらオレを含め誰一人、それを口にはしなかったのだ。