オレは皆とわかれたあと、部屋に戻ってシャワーを浴びた。
鼻歌交じりで髪を洗い、ハーフパンツを履き、濡れた海水パンツは部屋の空調の良く当たる場所に干した。タオルで頭をがしがし拭きながらベッドの端に腰掛ける。
サイドボードの上の内線電話が鳴った。オレは受話器を手に取り耳を近づける。
「お前、パーカー忘れてねぇか」
相手は里来だった。
「あっ、すみません。すぐ取りに行きます」
「ついでだから持ってってやる」
「いいんですか」
「五分後だ」
それだけ言って電話は切れた。なんとも不愛想な返答だが厚意には違いない。首に掛けていたタオルをバスルームに放り投げ、慌てて乾いたシャツに首を通す。万一見られてもまずいので、島に来るとき着ていた一式が絨毯に蹲っているのをワードローブに押し込んだ。水の滴る海水パンツもバスルームのドアの向こうへ隠す。
コンコンコンコン。
電話が切れておよそ二分後、あまりに早い来訪者が形式ばって四度入り口の扉を叩く。
「はい、今開けます」
バスルームから急いで駆け寄り、飛びつくように扉を開けると、目の前に立っていたのは里来ではなくイズミだった。イズミが思いのほか扉の近くに立っていたため、危うく顔がぶつかりそうになる。
「無人様、失礼いたします」
「あ、はい、イズミ……さん」
気恥ずかしくなってしどろもどろに受け答える。イズミは丁寧に畳まれた〝それ〟をオレに差し出した。
「里来様から預かってまいりました」
「ありがとう……ございます……」
「お礼は里来様へ。それと、私ども使用人に丁寧語や敬称は不要です。どうぞ、お気軽にお話しくださいね。それでは、失礼いたします」
一礼して去ってゆく後ろ姿が視界を外れると、オレは扉を閉め、手の中のパーカーを見た。チャックがきちんと首元まで閉められ、神経質なほど直角に折り目がついている。
畳んでくれたのは、どっちだろうか。