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第12話 村 1

 首輪から伸びた紐を持ってブタちゃんの前を歩く。


 まだ森の中だが車でも通れそうな広さの道を歩いている。


 やっと文明の香りがしてきた。全然舗装とかされていない土がむき出しの道だが、それでも森の中を草を踏み分け歩いてきた身としては、こんな道でもありがたい。


 早いところ第一村人を発見したい所だが全然現れない。道を歩いているのだから、いつかは村に着くのだろうが、まだかかりそうだ。


 休憩するのも時間がもったいないので、干し肉をかじりながら先を急ぐ。


 しばらく歩くとやっと森から脱出できた。草原と言った感じの見晴らしの良い場所にでる。


 少し先をみると麦畑のような場所も見えてきたので、だいぶ村に近づいているのだろう。さらにひたすら歩いていると、いつのまにか畑を越えて家のような物も見えてきた。


 あそこまでいけば村なのだろうか?

 あ、家の前に人がいる。農家のオバちゃんといった感じだ。


「すいませーん。旅のものですけど、ここはレペ村ですか?」


「ああ、ここはレペ村だが、あんたらどこから来たんだ? それにその後ろのはまさかオーク?」


「ええ、オークを捕まえて奴隷にしたんですよ。町に持っていくと高く売れるんです」


「そんな紐で大丈夫なのかい? 暴れだしたら手に負えないだろ。力が強いって聞くよ」


「大丈夫ですよ。こうみえても魔法で縛ってますからね。暴れたり逃げたりってのはできないんです」


「そうかい? なんだか怖いね。村にいくなら気をつけないと大騒ぎになるよ」


 気をつけようがないと思うが、もう少しこのオバちゃんから色々聞いてみよう。


「このままいけば村の中心に着きますか?」


「ああ、着くよ。まっすぐ行くと広場と教会があるから、そこが中心だ」


「お店は何がありますか?」


「店は雑貨屋と食料品店と薬屋ってとこだね」


「宿はありますか?」


「宿はないけど酒場の2階に泊まれるよ。オークは無理だと思うけど」


 オークは無理なのか……予想はしていたが人のオークに対する偏見は強いな。


「ありがとうございます。行ってみます」


 久しぶりに宿に泊まりたかったけど、今日は諦めたほうが良いかな。どうせお金もないし、何か稼ぐ手段を見つけなくては……。


 考え事をしながら道を歩いていくと教会が見えてきた。

 小さな村にしては意外と立派な建物だ。


「お店に行って物の相場を見にいこう。毛皮とか売れないかな」


「あそこが雑貨屋みたいですよ」


 ブタちゃんが指さした方には何の店だか解らないが、一応看板が出ていて店っぽく扉が開いている建物が見えた。


 何屋だか解らない辺りがきっと雑貨屋なのだろう。


「こんにちわー」


「あら、いらっしゃい。旅の方かしら?」


「ええ、町に行く途中で寄らせてもらいました。ここは買い取りもお願いできますか?」


「物によっては買い取る事もできますよ。行商もされてるのかしら?」


「そういうわけではないのですが、途中で狩りをしながら旅をしているので毛皮を買って貰いたいと思いまして……」


「毛皮なら買い取れるよ。見せておくれ」


「この2枚です」


「キレイになめしてあるね。これなら毛皮1枚を銀貨2枚で買い取れるよ」


 相場が解らないから、お願いするとしよう。


「それでお願いします」


「それじゃ毛皮2枚で銀貨4枚ね」


 銀貨4枚を手に入れた。


 目立ちたくないので早めにこちらの普通の服を手に入れたいのだけど、包丁とかフライパンの方が必要だろうか? パンとかもあれば食べたい……。


 店のオバちゃんに聞くとナイフ銀貨4枚、包丁銀貨3枚、フライパン銀貨3枚、ズボン銀貨2枚、シャツ銀貨1枚、マント銀貨3枚との事。感覚的には銀貨1枚1000円くらいなのだろうか?


「ところで後ろの奴隷はオークかい?」


「ええ、町に売りに行くんですよ」


「そんなの店に入れないでおくれよ。汚らしい」


「はあ、清潔にはしてますけどね。ダメなら外で待たせておきますけど……」


「そうしておくれ」


 ダメか、ブタちゃんは全くもって村には受け入れられないらしい。これでは宿も期待できないな。


「ご主人様、私は広場で待っております」


「ああ、いや先に食料品店に行こう」


「一人でまた後で来ることにします」 雑貨屋の店主にそう伝え二人で店を出た。


「こんなに厳しいのか……」


「予想通りですよ。村に入れてもらえただけマシです。」 ブタちゃんがマジメな顔で答える。


 食料品店にはすぐに着いた。店というより八百屋の露天という感じだ。


 色とりどりな野菜や果物が並んでいる。行ったことはないがヨーロッパのマルシェと言うのに近いと思う。匂いも色々な香りが混じって独特な匂いがするが清潔なせいか、いやな感じの匂いではない。


「ご主人様、この赤い実はなんですかね?」


「これはリンゴだろ。食べたこと無いのか?」


「ええ初めてみました」


 匂いを嗅いでみるが、完全にリンゴだ。


「もっと北の方で栽培されてるのかもな。甘くてうまいぞ」


「すいません。このリンゴいくらですか?」


「リンゴはひとつ銅貨1枚。今日町から届いたばかりだよ」


 リンゴは料理しなくてもビタミンとれて良いかもなあ。パンも売っているけど、あの白い粉は小麦粉かな?


 色々聞いたら小麦粉は一袋銅貨1枚、フランスパンみたいなのは銅貨2枚、日本でもお馴染みの野菜たちも色々売っているがどれも2個で銅貨1枚だった。


 粒コショウが小袋で銅貨1枚だったのは良かった。香辛料は特別貴重品という訳ではなさそうだ。


 リンゴ4個、じゃがいも4個、小麦粉1袋、胡椒1袋、カブとズッキーニみたいものも2個ずつ買った。


 ずっと肉ばっかりだったから野菜が嬉しい。そういえば肉とか魚がないな。


 どうも肉や魚は奥の建物の中らしい。まあ今日はいいだろう。食材が色々手に入ったのでやはり包丁とフライパンが欲しいが微妙に金が足りないな……。


 今日はフライパンだけにしておく。


 ブタちゃんを広場に待たせて、一人で先程の雑貨屋に戻って買い物をした。


 今日の出費は食材とフライパンで銀貨4枚使った。まだ必要な物は多い。

 狩りをしてお金を貯めて、装備を整えなくてはいけないようだ――――。


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