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第110話 『ホットドリンク』追加で飲まないと!

 うーん。

 せめて、ここに書かれている古代文字が読めればなあ。


「ここに書かれている文字の意味は、なんだっけ?」


『「覚醒の時は近い」やな』


「んー、すごく予言っぽい雰囲気はあるよね。それを古代語で唱えられれば何かが発動したりとか?」


『でもワイは持っていただけで閉じ込められたんやで? ワイ、古代語なんてしゃべれへんし』


 だよねー。

 ということは文字を読んだわけではなくて何かほかの――。


「おっさんの行動のどこかに発動条件を満たす何かがあったってことかな……」


『でもワイ、普通に家に帰っただけやで? 家の鍵を開けて家の中に入った瞬間に「ピカ~」や』


 何もわからない……。

 家に入るだけなら金属プレートは何にも関係ないし。


 んー、ずっとプレートを手のひらに乗せていたら、体温が移ってちょっと温かくなってきた。


「お姉さま~、そのプレートをノートに挟んでみるのはどうかしら?」


 ≪セリー≫が再びわたしの肩にあごを乗せてくる。


 アルミニウムの恥ずかしさから復帰したのかな?


「なるほどね。おっさんにプレートを持たせてみるみたいな感じかな。何かそれっぽくていいね! さっそくやってみよう」


 ノートを開いて床に置いて、と。


『ちょ、おまっ! なんでワイを床に置くんや! 手に持ってやらんかい!』


「嫌よ。もし呪いが再発動して巻き込まれたら嫌だもの」


 絶対に距離は取りたい!

 巻き込まれるのだけはカンベン!


『頼むでほんま……』


 開いたノートの上に金属プレートを置いて……何も起きないね。

 じゃあ、ノートを閉じてみる!


 急いで距離を取るっ!


「お、お姉さま……何も起きない……わね?」


「そうだね。これは違ったってことかなー」


『ダメやったか……。どうやったらワイは元に戻れるんや……』


 ホントどうやったら戻れるんだろうね?

 クエスト受注しちゃっているし、何とかしたいけど……。


 突然、通路の奥から凍りつくような冷気が流れ込んでくる。


 うわっ、寒っ!

 もう『ホットドリンク』の効果が切れたってこと⁉


「おおおおお姉さま!」


「『ホットドリンク』追加で飲まないと!」


 危ない……。

 忘れていたけれど、ここって極寒の地だったわ……。


 ゴクゴクゴク。

 ふぅ、なんとか凍らずに済んだわ……。


「んー、考えていても何も思い浮かばないし、『ホットドリンク』の数にも限りがあるし、ひとまずおっさんと金属のプレートを持って先に進もうか?」


 もともとこの隠し通路の探索のためにやってきたわけだし、一度探索を終えてからおっさんの呪いの解き方を考えても良いかもしれないなって。


「そうね……。また寒くなるのは嫌だし、私もそれが良いと思うわ!」


『ワイのことを助けて~や。見捨てんといて……ほんま頼むで……』


 おっさんのくせにそんな情けない声を出さないの。

 別に見捨てたわけじゃないからね?


「わたしも適当に言っているわけじゃないんだよ? この通路におっさん(ノート)が落ちていたのが偶然じゃないと仮定すると、この先にある何かがおっさんの呪いを解くカギになっている可能性も十分にあるなーって」


 こんないかにも「何かありますー」って感じで、冷たい風を吹かせておいて、先に進んだら何もなくて「行き止まりです」ってことはまずありえないだろうし、きっと何かはあるよ。この先に宝箱が置いてあって、そこに呪いを解くアイテムでも置いてあれば楽なんだけどなー。


 まあ、普通に考えると、強めの隠しボス的なヤツがいて、倒すとなんやかんやって感じなのかな。ありがちなクエストではあるけれど、そういうのってだいたい難易度高めだから初見ではきつかったり……っていうのはおっさんが騒ぎだしそうだから黙っておこうっと。


『なんや? 姉ちゃん、先に進まんのか?』


「あー、はいはい。ちょっと考え事ー。まずは隠し通路探索を優先するということで、いざ出発!」


 えいえいおー!


「おわっぷ! 先に進むって決めたら、急に風が強くなった?」


 気のせい?


【気のせいではありません。向かい風の風速が10m/sを超えました。通常の歩行で風に向かって歩くのがつらいと感じるレベルの強さです】


 だよねー。


「なんで急に風が……?」


「お姉さま、大丈夫?」


 ≪セリー≫ったら、わたしの後ろにしっかりと隠れて……。

 わたしゃ風よけか。


『ワイのこともしっかり握っておいてや。飛ばさんといてや?』


 気をつけますよ。

 薄いノートだし、しっかり持っておかないと表紙とかページがちぎれて飛んでいきそう。


『あ、こら。ワイを丸めるなや!』


「しっかり握っておけって言ったのはそっちでしょ。じゃあ、ノートを広げて持つから、飛んでいっても文句言わないでよ?」


『脅迫やんけ……。そしたら姉ちゃんに任せるわ……』


 そう、それでよろしい。

 おっさんの生殺与奪の権はわたしが握っているのだということを忘れないようにね?


 生意気言うとページを千切って風に飛ばすよ?


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