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アルミちゃん⇒VRMMOに永久就職する?ユニークJOB『配信者《ストリーマー》』になって世界を救います!
アルミちゃん⇒VRMMOに永久就職する?ユニークJOB『配信者《ストリーマー》』になって世界を救います!
奇蹟あい
ゲームゲーム世界
2025年01月23日
公開日
6.9万字
連載中
ブラック企業に勤めて5年目の田中有海(たなかあるみ)。
独身! 29歳! 彼氏いない歴=年齢=29年!

深夜3時。
今日はひさしぶりに会社に泊まらず、家に帰れることになった有海。
帰宅途中のメールチェックで、VRMMO『オーラムオンライン』のサービス終了のニュースを知る。
しかもなんと明日の昼12時にサ終するらしい。

『オーラムオンライン』は、有海が学生時代に留年してまで熱中してプレイしたフルダイブ型のオンラインゲームだ。
有海は当時、アイドルプリースト≪アルミ≫ちゃんとして、ちょっとした有名人だったのだ。

サ終のニュースを目にして、強烈に懐かしさを覚えた有海は、ひさしぶりに『オーラムオンライン』の世界へとダイブする。
しかし、時刻はド深夜もド深夜。
サ終前日にもかかわらず、見知った顔は誰もログインしておらず、懐かしい仲間と会うことはできなかった。

がっくりと肩を落としていると、『オーラムオンライン』のGMを名乗る≪オーラム≫という人物からDMが届く。
最初は怪しむも、話を聞いているうちに、『オーラムオンライン』サ終の後に始まる新サービス『オーラムオンラインPhase.2』に興味を持っていく。


≪オーラム≫が有海に連絡を取った理由、それは――。


5年務めたブラック企業が潰れ、今まさに無職になろうとしている有海に対して『オーラムオンラインPhase.2』へ就職しないか、というお誘いだった。
『オーラムオンラインPhase.2』内で新ユニーク職業『配信者《ストリーマー》』として活動するために、有海はスカウトされたのだった。

これは24時間フルダイブ型VRMMOの中で、元アイドルプリーストの≪アルミ≫ちゃんが『配信者《ストリーマー》』として活躍していくお話。
『配信者《ストリーマー》』が世界を救う、かもしれない?

プロローグ【前】~VTuber≪アルミちゃん≫、Lv.1でヤギの悪魔・バフォメットに挑む!

【≪アルミちゃん≫、いよいよボスが出現するエリアです。準備は良いですか?】


 空中を駆ける真っ白な毛並みの猫――サポートAIの≪サポちゃん≫が声をかけてくる。上に向かってピンと張った長い尻尾が風に揺れていて……モフモフ触りたひ。


 わたしは≪サポちゃん≫を追いかけるようにして林の中を進んでいく。わたしも空を飛べたら楽なのになー。ここ、周りの枝に服をひっかけそうだし、足元の草に足を取られそうになるし、すごく歩きにくい……。


「準備って言っても……まだ戦闘前だからわたしにできることは何にもなくない?」


【あります。大切な仕事をお忘れですか? 生配信を視聴してくださっている方々に媚びるという大切なお仕事が残っています】


 媚びるってそんな露骨な……。

 感謝するとか、応援してもらうとか、もっと丸い言い方っていうものがね?


【忘れたのですか?≪アルミちゃん≫のJOBは『配信者ストリーマー』です。生配信の同時接続数によって戦闘力が変化し、投げられるギフトの量によって使用できるスキルの種類、威力に変化があります】


 へいへい。

 わかってますよー。

 仕方ないなー。いっちょ媚びてやりますかー!


【つまり、視聴者がいてこその≪アルミちゃん≫。ギフトをいただいてこその『配信者ストリーマー』なのです】


「さすがにそれくらいはわかってるってー。ねーみんなー? 応援してくれるよねー♡ それに今さらそんなことを長々と説明しなくても、わたしだけじゃなくて、もうさすがに常連のみんなはこのユニークJOB『配信者ストリーマー』の戦闘システムは知ってるよね?」


“おう! 知ってるぜ!”

“全部聞こえてるんだよなあw”

“清々しいくらいに駄々洩れなんだがw”

“はよ媚びろwww”

“お前らギフトの残弾は十分か⁉”

“アルミちゃん今日もかわいいよ☆”

“痺れる戦いを見せてくれよな”

“<わたしたちもおうえんしている>”

“これを見るために今日も働いている!”

“アルミは俺の人生”

“ちゃんをつけろ! デコハゲ野郎!”

“アルミちゃんさん”

“名前呼んでくれたらギフト奮発するw”

“<ラストスキルはわらわに任せるのじゃ>”

“出た! LA(ラストアタック)の姫君!”

“のじゃのじゃ姫!”

“アルミちゃーん、こっち向いてー”

“サポちゃんモフりたい”


「みんな応援ありがとねー。いつも来てくれるみんなも、初めて見てくれたキミも、みーんなまとめて愛してるよー♡」


 媚び媚びきゃるるん♡

 ねぇ……わたし、三十路でこのロリっぽいキャラきつくない? 放送事故ってない……?


【大丈夫です。ぜんぜんいけます。私の中ではど真ん中ストライクです】


 いや……≪サポちゃん≫の好みを聞いているわけじゃなくて……。


 お、媚び媚びが効いたのかな? 良い感じに同接も増えてきたよー。

 もうそろそろ戦えるんじゃない?

【適正レベル相当の戦闘力には少し足りません。あと10万ほど接続数を増やしてください】


「うへー、厳しい! みんなー、≪サポちゃん≫があと10万人連れてこいってさー。10万人のお友だちがいる人! お願い♡」


“友だち? なんだそれ? うまいのか?”

“だってよw10万人のお友だちがいる陽キャの人、頼むわwww”

“この中に有名なインフルエンサーの方はいませんか?”

“<わらわの国の民に呼びかけておいたのじゃ。じきに集まる>”

“お、LAの姫君、ホントに姫設定?”

“設定言うなってw”

“SNSのフォロワーならそれくらいいるが、さっきからポストしまくってるぜ”

“お前のフォロワーインプレゾ~ンビw”

”お、急激に同接増えてねぇ?”

“姫パワー来たか(ガタッ)”

“姫ー! 姫ー!”

“<わらわに不可能はないのじゃ。≪アルミちゃん≫のことは国をあげて応援するのじゃ>”

“のじゃのじゃ!”

“姫の国に乾杯![@ギフト・スターが100個贈られました]”

“おい、戦闘前にギフト無駄打ちすんな。今贈っても戦闘力のカウントに入らないぞ”


「あー、ギフトスターありがとね♡ ううん、戦闘の時じゃなくてもうれしいよー。わたしの今晩のおかずが1品増えるもん♡」


 夕飯のおかずが増えるのはわりとホント。

 ギフトスター1個もらえると、わたしにも100[SEED]の分配金があるから、スター100個で10000[SEED]ももらえちゃう! 戦闘の時にもらったギフトは、ほとんど武器や魔法に消えちゃうからねー。実は非戦闘時のギフトのほうがわたしはうれしい!


【私にも高級ネコ缶をお願いします】


「仕方ないなー。ボス戦に勝てたらね♡」


“負けフラグ?w”

“どうせ今日もワンパンだろw”

“だけどさー、今日挑むのはヤギの悪魔・バフォメットだろ?”

“あれをソロ討伐はだいぶヤバくない?”

“初めましてだと普通に負けることはあるな”

“初対面ならな”

“なんせ≪アルミちゃん≫はAO出身だからバフォの立ち回りは熟知してるだろ”


「ふふーん♪ そうだよー。バフォメットは得意中の得意だからねっ。わたし、元『高位神官ハイプリースト』だし、バフォメットは闇属性の敵だしー♪ なんなら火力役でも参加できちゃうくらいだったよ♪」


神官プリースト』は基本支援職だけど、唯一の攻撃手段として、聖属性スキルによる攻撃を持っているからね。闇属性か不死属性の相手、または不死種族の相手だったらスキルで弱点を突いて大ダメージを与えられるのさー。つまり、バフォメットはわたしの得物ってわけ!


【ですがそれは≪アルミちゃん≫が高レベルになっていた時の話でしょう】


「そうねー。Lv.90を超えたあたりからは立ち回り次第ではソロ討伐もできてたかな?」


【今の自分のレベルがいくつかわかっていますか?】


「えっと……Lv.1……ですけど……」


“出たー!最強のレベル1www”

“マジウケるw”

“アルミ、いくらボスを倒しても一生Lv.1じゃね?w”

“経験値どこに消えてんのwバグ?www”

“ずっとレベイチだから、俺らがいないと敵倒せなくね?”

“俺らとギフトな?”

“<わらわがいれば無敵なのじゃ>”

“のじゃー!”


 そうなの。

 なんかシステムの欠陥があるのかわからないけれど、戦闘時に獲得した経験値は、なぜだかわたしの本体『配信者ストリーマー』の経験値としてはカウントされないっぽいの。戦闘時に自動選択されて変身した『JOB』のほうにカウントされているっぽくて……。


 ちなみに今はロックされていて変身できないけれど、戦闘時に使用するJOB選択用の『Wish List』を覗くと、戦闘時の『JOB』一覧でのレベルは――。


----------------

騎士ナイト :Lv.100→2次転職済み:聖騎士パラディン :Lv.80

神官プリースト :Lv.100→2次転職済み:高位神官ハイプリースト:Lv.62

魔術師マジシャン:Lv.100→2次転職済み:青魔導士ウィザード:Lv95

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 それなのに肝心な『配信者ストリーマー』はLv.1のまま……絶対おかしいよね? なんなら戦闘時の『JOB』は上位職に自動転職とかもしちゃってるし。


【おそらく今回選択されるJOBは『高位神官ハイプリースト』または『青魔導士ウィザード』になるでしょう】


「まあそうよね。広範囲の闇ブレスを頻繁に撃ってくるから、魔法耐性が高くないとバフォメットと対峙するのは厳しいし、物理職はないかなー」


 戦闘時に『JOB』選択は、システム側によって自動で行われるので、わたしが「このJOBのレベルを上げたい!」って思っても、なかなか思い通りにはいかない。まあ、唯一できる方法が、こうやってボスの特性や攻撃スタイルを見極めて、選択される『JOB』を予測することくらい?


【≪アルミちゃん≫、同時接続数は十分です。そろそろいきましょう。それとも、せっかく集まってくださった方々に向けて、このままおしゃべり配信を続けますか?】


「もっちろんボス戦いくよー! ワンパンで倒してから祝勝会という名のダラダラおしゃべり配信に付き合ってもらう予定だから! みんなもそっちのほうがうれしいでしょ?」


“ダラダラおしゃべり助かるw”

“これで酒でも飲んでくれw[@ギフト・クマのぬいぐるみが贈られました]”

“だからギフトの無駄打ちやめいw”

“先に報酬を払うのは負けフラグだぞw”

“はよボスと戦ってくれ。このままだと風邪ひく”

“パンツ履けw”

“パンツ爆散した”


 よーし、同接も減ってない!

 ≪サポちゃん≫、この勢いで、ヤギの悪魔・バフォメットを倒しに行っちゃおう!


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