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第6話 それって事故、なんだよな?

 今から3カ月前。

 月面基地建設予定地付近を走っていたムーンバギーが突如として消息を絶ったというのだ。クレバスがあるわけでも、クレーターがあるわけでもない平坦な道が続くエリアを走行中にだ。

 ムーンバギーに乗っていたのは、ミノリ、そしてバディのイチカという女性らしい。あのビデオレターを撮ってくれていた人物だろうか。


『調査隊の報告によると、ムーンバギーの轍が突然消えていたらしい。何もないところでな』


「それって事故、なんだよな? まるで連れ去られたみたいな――」


『ああ、もちろんそっちの線を疑って調べさせている。いくら周辺を調べても何も出てきていない現状からすると、むしろそっちの線が濃くなっていると言っても良いだろうな』


「荒唐無稽な話だな。ムーンバギーごと消えているんだよな? 誰が連れ去るって言うんだ? 月のうさぎか?」


『月面基地建設予定地は、月の裏側なんだよ。宇宙省としては、地球外生命体の関与の可能性は捨てきれていない』


 バカバカしい。


「宇宙省とやらの見解はどうでもいい。お前の考えはどうなんだ?」


『俺は……事件だと考えている』


「そうか。それだけ聴ければ満足だ。それじゃあな。あとは頼んだぞ」


 調査が進んでいる。

 それだけわかれば十分だ。

 ミノリのことは……じきに見つかるだろう。


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