5日目の昼
僕とゼンとノンは
怪鳥の攻撃によって
崩れ始めた洞窟内から
脱出するため
洞窟の出口を目指し
風が通る音を頼りに
ひたすら走り続け
「出口が見えてきた!
一度出口近くから、
外の様子を確認しよう」
なんとか
生き埋めにならずに
出口まで辿り着き
ゼンは
僕とノンを出口手前に残し
1人で外の様子を確認しに
走って行った
「モネ、
私の準備が整ったら
合図を送ります。
そしたら私の所に
来てください」
僕は尻尾で
"わかった"と返事を返し
そして
外の様子を確認しに向かった
ゼンが戻ってきた
「どうやら、
上空で俺たちが出てくるのを
待ち構えているみたいだ」
「ただ、
この出入り口には
気付いていないみたいだし」
「ノンにはここで、
作業を進めてもらおうと思う」
「わかりました」
「俺とモネは、
魔物の注意を引きつけに
外に出て対峙しよう」
「さっきの戦いから
わかったけど、
真っ向から挑んでも
こちらに勝ち目はない」
「だからモネ、
今回はとにかく
時間を稼ぐことだけに
意識を向けて行動しよう」
僕は
ゼンの提案を受け入れ
尻尾で"わかった"と
返事を返した
「よし、いくぞ!!」
僕とゼンは
洞窟の外へ走り出し
ノンがいる洞窟の入口から
離れた場所まで向かう
「ギェェェェェエエエ!!」
どうやら
魔物は早くも
僕たちの姿に気付いたようだ
魔物は
僕たちの姿を捉ると
すぐさま咆哮を放ち
そのまま上空から
突進攻撃を仕掛けてきた
「さすがに、
上空からだと
すぐに気付くか」
「モネ、
外での戦いでは
あちらさんの方が空を飛べる分
圧倒的にこちらが不利だ」
「だけど時間を稼ぐだけなら
周辺の柱や地形を
攻撃を交わす手段として
利用することができる」
「二手に分かれて
撹乱させつつ、
とにかく攻撃を避ける
ことに専念するんだ」
僕とゼンは
作戦を確認すると
柱の裏に飛び込んだ
その直後
魔物が柱の間を通過し
なんとか
初手の突進攻撃を回避した
魔物はそのまま
上空に舞い上がると
体を起こしながら
僕たちがいる方向に体を向けた
そして
大振りにゆっくりと
翼を羽ばたかせながら
徐々にそのスピードを
上げていく
「モネ!
柱の影に隠れながら
そのまま何かにしがみつけ!」
ゼンが
僕に向かって叫んだ後
物凄い勢いの突風が襲ってきた
柱はビクともしていないが、
周りにある小さな瓦礫や石、
草などが僕たちの体を襲う
だけどなんとか
柱の影でしがみつくことで
大きなダメージを
防ぐことはできた
「よし、
次の攻撃に備えよう」
魔物は
突風攻撃を繰り出した後
僕たちがいる場所の上空を
ゆっくりと円を描くように
飛び回っている
次の攻撃手段を
考えているのか
それとも
連続攻撃により
消耗した体力を
回復させているのか
いずれにせよ
そのまま上空を飛び回って
様子を伺ってくれてた方が
時間も稼げるし助かる
だが油断はできない
もしかしたら既に次の攻撃に
移っているのかもしれない
もしあの動きが
その予兆だとしたら...
まさか!?
僕は
魔物の動きの意味に気付き
ゼンに合図を送る
そして僕とゼンは
魔物が飛び回ってる範囲から
離れるように走り出したが
魔物が
飛び回るスピードを上げると
周囲に竜巻が発生し
逃げ道を絶たれてしまった
「これは参った。
そこまで勢いの強い
竜巻ではなさそうだから
竜巻の中央にいる限りは
大丈夫そうだが」
「瓦礫の破片などが
竜巻の壁となってて、
竜巻の中から
出るのは厳しいか」
魔物は
竜巻を発生させた後
周囲を飛び回りながら
中の様子を伺っている
どうやら
竜巻を起こすことはできるが
起こした竜巻をコントロール
できるって訳ではないらしい
僕とゼンが
竜巻の勢いが弱まるのを
待ちながら
時間を稼いでいると
魔物は周囲を飛び回りながら
翼を閉じた状態で
勢いよく低空から上空へと
円を描くように昇っていき
竜巻中央の上空に到達すると
物凄い遠心力で回転した後
僕たちがいる方向に
翼を広げ真空波を放ってきた
竜巻の外側に放たれた
真空波は遠心力の影響で
僕たちのいる竜巻の中央へと
方向を変えながら竜巻の壁を
越えて僕たちを襲ってきた
「ぐぁっ!!」
僕たちは
竜巻内にある柱を利用して
真空波を避けようとしたが
前後左右から縦横無尽に
襲いかかる全ての真空波を
回避することができないと
判断したゼンは
僕を守るように
真空波が襲いかかる方向に
向かって防御姿勢を取り
何発か喰らってしまった
だが
真空波の攻撃が納まった後
竜巻の勢いが
急激に弱り始めたため
僕たちは急いで
竜巻の外へと向かって走った
なんとか
竜巻の外へと脱出し
次の攻撃に備え
体勢を整えようとした時
ノンがいる方向から
たいまつの火が
チラッと見えたので
僕は
すぐさま方向転換し
ノンの所に向かって走り出した
ゼンは
魔物の注意を引きつけるべく
魔物に向かって石を投げつつ
ノンがいる方向とは
逆の方向に走り出し
僕は
ノンの所に戻ると
ノンから道具袋を受け取った
「出来る限り
相手の動き止めた状態で
使ってください」
僕は尻尾で
"わかった"と返事をし
ゼンがいる方向に向かって
急いで走り始めた
ゼンは
周囲に柱や瓦礫のない
開けた場所に到達すると
魔物の次の攻撃に備え
回避体勢を取る
「ギェェェェェエエエ!!」
魔物は
再び咆哮を放った後
勢いよく上空から
突進攻撃を繰り出したが
僕は
ゼンに襲いかかる
魔物の突進攻撃に
横から不意をつくように
勢いよく飛び込んだ
魔物はそれに気付くと
すぐに突進攻撃の勢いを殺し
瞬時に翼を閉じて
防御体勢を取りながら
地面に着地した
なるほど
この防御体勢の時に
攻撃を与えると
またカウンターで真空波を
放ってくるってことか
僕は
魔物の狙いを理解すると
この状態を利用して
時折攻撃する素振りを
見せながらも
カウンターを喰らわないよう
攻撃が当たる直前で寸止めし
ひたすら周囲を飛び回りながら
相手を牽制しつつ
ノンから受け取った
道具袋の中身を魔物に
気付かれないよう
少しずつ振りかけていく
ゼンは
次の行動に向けて
姿勢を構えたまま
魔物の動きを観察している
魔物は
しばらく防御体勢のまま
カウンターを放つ機会を
伺っていたが
攻撃する素振りを見せつつも
実際に当ててこないことから
これ以上誘っても意味がない
と判断したのか
防御体勢を解き
再び空へと飛び上がるために
衝撃波で僕達を遠くへ
追いやろうと翼を広げた
しかしその瞬間
広げた翼の動きが鈍くなり
魔物の体がグラついた
「ここだ!」
ゼンは
魔物の体がグラついた瞬間
勢いよく走り出し
魔物目掛けて
瓦礫の棒を叩き込んだ
「ギャャャャァアア!!」
ゼンの攻撃が
魔物の首筋にヒットし
魔物は叫び声とともに
そのまま地面に倒れた
ゼンは
一度距離を取ってから
再び攻撃を繰り出そうとした
しかし
魔物は倒れながらも
片翼で防御体勢を取り
ゼンの攻撃を受け止めると
攻撃を振り払い
カウンターの真空波を放つ
しかし
ぎこちない動きにより
さっきまでの勢いはなく
ゼンは
そのカウンター攻撃を
難なく避けることができた
そして僕は
魔物が弱々しくも
再び空に飛び上がろうと
翼を羽ばたかせた瞬間を狙い
いまだ!!
魔物が飛び上がろうとした
その上空から
落下の勢いものせて
爪による攻撃を繰り出す
不意を突かれた魔物は
僕の攻撃をまともに喰らい
そのまま地面に倒れた
「はぁ...はぁ...はぁ...」
「ゼンー!モネー!」
魔物が倒れたのを確認すると
ノンが僕とゼンの側に
駆け寄ってきた
「どうやら、
大人しくなったみたいだ」
「はい。
ただすぐに起き上がって
くるかもしれません」
「激しい戦いの後で
お疲れのところだと思いますが、
すぐにでもここを離れましょう」
「あぁ、そうだな」
僕とゼンとノンは
魔物が再び起き上がる前に
この場を離れるべく
急いで遺跡を後にした