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第11話「怪鳥と異変」

5日目の昼


僕とゼンとノンは

遺跡でゲリラホークという

鳥型の魔物に襲われたが


なんとかこれを撃退し

少しの休憩を挟んだ後


ゲリラホークが

飛び去って入って行った

洞窟の奥を目指し

歩み始めていた


洞窟の通路は

そこまで広い訳ではない


ということは

その大型の鳥型の魔物も

思っている程

大きい訳ではないのか


それとも

僕たちが入ってきた入口とは

別の場所にも入口があり

そこから出入りしているのか


「もし大型の魔物なら

 狭い場所での戦いは

 こちらの方が

 有利かもしれないな」


どうやらゼンは

洞窟内で戦闘になった場合の

ことを考えていたようだ


確かに

この洞窟内で翼を広げて

飛び回るのは難しいし


小回りが効く僕たちの方が

有利な可能性はある


ただ

先程のゲリラホークも

なかなかの知能を

持っていたことから


もし

その大型の魔物が

ゲリラホーク達の

ボス的存在だった場合


狭い場所でも戦える手段を

持っている可能性もある


そんな風に

考えながら進んでいると

天井に大穴が広がった

少し開けた空間が見えてきた


「どうやら、

 ここが洞窟の最奥

 みたいだな...」


僕たちが

その空間に

足を踏み入れた瞬間


奥の方から

威圧的な雰囲気を放ちながら

大型の鳥型の魔物がゆっくりと

僕たちに向かって近づいてきた



「想像していた以上に

 大きな魔物だな、

 さしずめ怪鳥と言ったところか」


「はい。

 ただ、この洞窟内も

 特別異変が起こっている

 訳ではなさそうです」


魔物は僕たちの方に

視線を向けたまま

一定の距離まで近づくと


なぜかその場から

動かなくなった


しかし

僕たちに向ける視線は鋭く

急に襲い掛かってきても

おかしくはない


僕たちは

いつ攻撃れても

回避できるように

程よい距離感を保ちつつ


魔物を見据えながらも

この魔物が

ノンのいう異常な現象を

起こしているのか確認すべく

周辺を見渡す


「ああ、

 ざっと見渡した感じは

 至って普通の洞窟って感じだな」


「どうする?

 この距離感なら、

 あちらさんも襲ってくる

 気はないみたいだが」


「そうですね。

 とりあえず、

 この魔物が原因で異変が

 起こっている訳ではない、

 それは確認できました」


「じゃあ、

 一旦この洞窟から

 出ることにするかい?」


「はい...」


僕たちは

目の前の大型の魔物と

戦わずに済みそうだと

安堵を覚えながら


再び入り口の方に

戻ろうとした時


「ギャャャャァアア!!」


その魔物が

急に雄叫びを上げながら

地面に倒れた


「なんだ!?

 どうしたんだ!?」


魔物は

何度も起き上がろうとするが

その度に地面に倒れてしまう


「わかりません。

 特に怪我をしているように

 見えませんでしたが、

 どうして急に...」


「ギャォォォォォオオ!!」


そして今度は

何事もなかったかのように

平然と起き上がり

咆哮を放った後


「これは...マズい!」


ゼンの叫び声と同時に

魔物は翼を広げると

周囲に衝撃波を放ってきた


突然の出来事に

回避行動が取れなかった

僕たちは

衝撃波を喰らい吹っ飛ぶ


しかし、ゼンは

衝撃波を喰らう瞬間


瞬時にノンの手を取り

自分の胸に引き寄せ

上手くノンを衝撃波から

守ることができたが


「がはっ!!」


だけど

自身は受け身を取れずに

そのまま地面に

叩きつけられたみたいだ



「ゼン!!

 大丈夫ですか!?」


「ああ...

 ノンは怪我してないか?」


「はい、

 私はゼンが庇ってくれた

 お陰で大丈夫です」


「モネも、

 上手く丸まった姿になって

 身を守ったみたいだけど」


「これは、

 困ったことになった」


「どうやらあちらさんは、

 先程の謎の現象を、

 俺たちの攻撃だと

 思ったみたいだぞ」


ゼンの言う通り

魔物はこちらに向かって

続けて走りながら

突進攻撃を仕掛けてきた



ゼンはノンの手を取り

突進のルートを外れるように

壁に沿って走り出すが


魔物は

ゼンとノンが走る方向に

方向転換しながら

突進を続ける


僕は

魔物のターゲットから

外れたことを確認すると


背後から爪による

ひっかき攻撃を繰り出す


しかし

魔物は背後の気配に

気付いたのか


突進している勢いのまま

回転を加えて翼で打ってきた


不意を突かれた僕は

避けきれずに

魔物の回転攻撃で

吹っ飛ばされた


だが

ゼンとノンへの突進攻撃は

止まったようだ



「さすが、

 さっきのゲリラホークの

 親玉ってだけあって、

 頭が良いな」


ゼンは

僕が体勢を立て直しながら

着地した場所に駆け寄りつつ

魔物の頭の良さに関心する


「あの大きさじゃあ

 持てるサイズの石で遠距離から

 攻撃しても大したダメージに

 ならなさそうだな」



「どうにかして

 体勢を崩すことが

 できればいいんだが」


翼による衝撃波で

吹っ飛ばされると

近づくことができない


なら

あえて突進攻撃を

真正面から迎え撃ってみるか


僕とゼンは

砂を道具袋に詰めながら

魔物が再び

突進攻撃をしてくるのを待つ


しばらくのにらみ合いが

続いた後



「ギェェェェェエエエ!!」


魔物は再び咆哮を放ち

僕たちに向かって

突進攻撃を仕掛けてきた



僕はゼンに合図を送り

一緒に走り出す


「よし、

 このタイミングだな!」


ゼンは

タイミングを見計って

砂の入った袋を

回転しながら振り回し始めた


僕も続けて

タイミングを見計らって

ゼンが振り回す袋を

爪で引っ掻いて破く


道具袋の中にある砂が

遠心力によって

勢いよく突進してくる

魔物の顔目掛けて襲い掛かる


「ギャャャャァアア!!」


魔物は

目に砂の攻撃を受け

叫び声を上げながら

その場に倒れた


すかさず僕は飛び上がり

上空から

引っ掻き攻撃を繰り出し


ゼンは

洞窟に入る前に拾った

瓦礫の棒を

魔物の顔目掛けて叩き込む


しかし

魔物も身の危険を感じたのか


苦しげな声を上げつつも

体を起こしながら

翼を閉じて防御体勢を取る


僕とゼンは

防御体勢を取る魔物に向かって

構わず攻撃を仕掛けた


しかし

攻撃がヒットした瞬間

魔物は翼を交差するように

勢いよく広げ


カウンターで

真空波を放ってきた


「ぅぁぁああっっ!!」


僕とゼンは

真空波攻撃をまともに喰らい

後方に吹っ飛んでいく


「ゼン!モネ!」


ノンが

僕とゼンの側に

駆け寄ろうとした瞬間


魔物が放った真空波が

壁に当たった衝撃で

洞窟上空の壁が崩れて

洞窟内に落ちてきた


「壁が...」


「この洞窟の中にいるのは

 危険です!

 一旦退避しましょう!


「こっちの道から、

 風が通る音が聞こえます。

 きっと外へと続いている

 はずです」


ノンは

これ以上ここにいるべき

じゃないと判断し、

そう僕たちに告げ


僕とゼンは体を起こすと

ノンの誘導に従って

入ってきた道とは

違う出口に向かって走り出す


「ギェェェェェエエエ!!」


そして

魔物の咆哮が聞こえた後

翼を羽ばたかせる

音が聞こえてきた



「はぁ...はぁ...はぁ...」


「どうやら、

 外まで追ってくる気みたいだな」



「それにしても、

 まさかここまで

 太刀打ちできない相手とは

 思ってなかった」


僕も走りながら

次の作戦を考えているが

相手が悪すぎるのか

良い策が思い付かない


外での戦闘となると

空からの攻撃手段がある

魔物の方が有利だし


あの頭の良さを考えると

砂による目潰し攻撃は

もう通用しないと

思った方が良い


どうしたものか

そんな風に思案していると


「ゼン、モネ、

 外であの魔物と

 再び戦うことになったら

 私に対策を講じる時間を

 頂けないでしょうか」


ノンが

魔物との戦いについて

とある提案をしてきた


「わかった。

 ノンの準備が整うまで

 俺とモネで

 時間を稼いでみる」


「ありがとうございます」


僕とゼンとノンは

怪鳥との2回戦目に向けて

気持ちを切り替えると


再び洞窟の外に向かって

走り始めるのだった



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