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第3話「ピンク髪の女の子」

2日目夜


パチパチ...パチパチ...


僕とゼンは

ゴブリンを倒した後

森の道の途中で焚き火をして

朝まで過ごすことにした


だけど昨日までの

焚き火で過ごす夜とは

違う点があった


僕とゼンの目の前には

ピンク色で、セミロングの

綺麗な髪をした

女性が座っている


先ほど森の道途中で

ゴブリンに襲われていた人だ


「改めまして、

 危ないところを助けて頂き

 ありがとうございました」



目の前に座っていた女性は

律儀にも立ち上がってから

改めてお礼を言葉にすると


僕とゼン両方に視線を向けて

丁寧に2度お辞儀をする


「大した怪我は

 してないみたいだし、

 無事でよかったよ。」


「だけど

 擦り傷程度だったとしても

 森の中で負った傷だ。」


「早めに治療はした方が

 いいかもね。」


ゼンは

なぜゴブリンに

襲われていたのか


なぜこの森にいるのか

といった相手の事情を

探るような質問はせず


ただただ相手の

怪我を気遣った


ゼンは多くを語らないが

その言葉一つ一つに

相手を尊重する

意思が見受けられる


「お気遣い頂き

 ありがとうございます」


目の前の女性も

ゼンの気遣いに

気づいたのか


再びお礼を言って

その場に座る


「私は...」


女性は何かを言いかけて

軽く首を横に振ると

自分の名前を教えてくれた


「私の名前は、ノンと言います。

「訳あって...

 旅をしております」


ノン...か...


格好や話し方から察するに

この辺りに住む人ではない

ということは分かる


「その旅の途中、

 この森の奥にある遺跡に

 向かおうとしていたのですが...」


「なるほどね」


「それで先程の

 ゴブリンの群れに

 見つかってしまい

 逃げていた、という訳か」


 ゼンは、

 ノンが言葉に詰まった時に

 見せた表情から事情を察して

 そう返した


「はい」


「お節介かもしれないけど、

 一人でこの森の奥を目指すのは、

 やめた方がいいかもしれないな」


「きっと、

 この森やその遺跡とやらに

 生息している魔物が


「先ほどのゴブリン3体だけ

 ということはないだろうし」


ゼンは

ノンが一人で先程の

ゴブリン達から

逃げていたこと


僕とゼンが

ゴブリン達を倒した後も

誰かを探しにいく素振りを

見せないことから


仲間とともに遺跡を

目指していたが


先程のゴブリンか...

あるいはより強力な魔物か...


いずれにせよ

何かしらの理由で

一人になってしまった

ということだろう


そう状況から判断し

どうしてもその遺跡に

行かなければならない

事情があったとしても


一度、近くの村に向かい

体勢を整えてから

改めて向かった方が良い

そうノンに提案した


「そうですね。

 この森を西に抜けた先に、

 モリという村がありますので」


「一旦その村に

 向かおうと思っています。」



「なら、

 そのモリという村まで

 護衛として同行させてもらうよ」


「そんな...

 助けて頂いた上に、

 護衛までして頂くわけには...」


ノンは、

縋るような表情を見せた後

すぐに申し訳なさそうな

表情になりそう答えたが


「俺たちは、

 ハツノという村を目指して

 旅をしている最中で」


「休ませてもらえる場所が

 あることを期待して、

 この森で見つけた足跡を頼りに

 人が住む場所を目指してたんだ」


「だから、

 そのモリという村に行けるなら」


「こちらから

 同行させてもらうのを

 お願いしたいくらいさ」


「俺たちは

 ノンの護衛として」


「ノンは

 俺たちの道案内役として、

 協力してモリを目指す

 っていうのはどうだ?」


ノンは、ゼンが

恩や負い目を与えないように

配慮してくれたことを

感謝しながら


「ありがとうございます」


「それでは明日、

 一緒にモリに向けて

 出発しましょう」


そう僕とゼンに向けて

笑顔で応えてくれた


チュン...チュン...チュン...


「ん...」


「おはようございます」


ノンが

僕とゼンに声をかける


どうやら

夜が明けたようだ


「朝ごはんを

 用意したのですが、

 お口に合うでしょうか」


そうノンは言いながら

鍋に入ったスープを器に注ぎ

僕とゼンに手渡す


「ありがとう...」


「うまっ!」


ゼンは

ノンから器を受け取り

お礼と同時にスープを口にすると

驚いたような声を上げ


ノンが作ってくれたスープを

一気に飲み干す


「お口に合ったようで、

 よかったです」


ノンは

そう笑顔で応えると

ゼンから器を受け取り

再びスープを注ぎ手渡す


どうやら干し肉を使った

スープらしいが

確かに美味しい


「以前

 立ち寄った村で買った

 ハーブやスパイスを

 使ってるんです」


ハーブの爽やかな香りと

スパイスの食欲をそそる

刺激的な香り


そして

干し肉からでる旨味が絡み合い

絶妙な味わいが舌を楽しませる


ゼンは

ノンの作ったスープを

すごく気に入ったのか

何度もお代わりを要求し


「はい、喜んで」


ノンは

作ったスープを美味しそうに

飲んでくれているゼンから

お代わりの要求を受ける度に


少し照れながらも

最高の笑顔と

控えめなトーンで

その要求に応えていた


「そういえば、

 名乗ってなかったね。

 俺はゼン、

 こっちはモネだ」


「これからモリまでの道中

 よろしくお願いするよ」


そう言って

ゼンはノンに手を伸ばし

握手を交わす


「よろしくお願いします

 ゼン、モネ」


「そういえば、

 モネって...」


 ノンは

 ゼンと握手を交わした後

 僕の方に視線を向け

 質問を投げかけてきた




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