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アナザークロス
アナザークロス
ゆうえんち
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年01月23日
公開日
3.2万字
連載中
2年の旅を経て故郷の村へと帰ることにしたモネとゼンは、その帰路の途中で立ち寄った森で女の子と出会う。
その女の子との出会いが世界を巡る新たな旅へと繋がっていく。世界各地で起こっている異常な現象、主人公の種族に関する謎など、世界の謎を追う冒険ファンタジーです。

第1話「旅路」

温かい


目の前には

暗闇が広がっているが


周辺からは

パチパチという

音が聞こえてくる


どうやら僕は

眠っていたらしい


目を開けると

そこには焚き火があった


「なあ、モネ」


隣から男性の声がする


「そろそろ

故郷に帰ろうと思うんだ」


僕は

男性の声がする方向に

視線を向けた


男性の名前は「ゼン」


僕は「ハツノ村」という村で

ゼンと一緒に育った


ハツノ村は森や

山々に囲まれた

自然豊かな地域にある村で


ゼンは

ハツノ村出身のジンマ族だ


僕は

そんなゼンと一緒に

2年前にハツノ村を離れ


外の世界を知るための

旅を始めることにした


そして、この2年間の旅で

僕たちは色んなことを知った


まず僕たちがいる大陸の名前が

ミルゼ大陸ということ


この世界には

他にもいくかの

大きな大陸が存在すること


それ以外にもハツノ村では

食べたことのない

美味しい料理や珍しい食材


危険な動物やハツノ村とは

異なる町の人たちの人柄や

生活模様など


ハツノ村では

体験できないようなことを

たくさん学ぶことができた


どうやらゼンは

この2年間の旅で得た

知識や経験談を


ハツノ村に住む家族や

仲間達への土産話として

持って帰り


一度顔を見せに戻ろうと

思ったみたいだ


確かに

僕らは旅を始めてから

1日も休まず

歩き続けてきたわけだし


ここで一度ハツノ村に戻って

休みを挟んでもいいかもしれない


そう思い

ゼンに視線を移し

2回頷いてみせた


それから数分の間

お互いに物思いに老けた後

ゼンがボソッとつぶやいた 


「みんな、

 元気にしてるかなぁ」


ゼンは多くを語らないが

たくさんの意味が

込められた言葉だと感じた


世界は広い


これまでの旅でも

のびのびと豊かな暮らしが

できている町もあれば


隣接した町の境界を隔てて

争っている町もあったし



ルールの厳しい町や

地主が独裁政治を

敷いている町もあった


良いことも悪いことも含め

2年という短い旅の中で

様々な世界を知ることができた



驚いた事と言えば

どの町もその町特有の

様々な事情を抱えてはいるものの


危機切迫したといった

雰囲気の町はなかったのだ


町の中での暮らしに差はあれど

皆その町のルールに従っていれば


十分に暮らしていくことは

できているみたいだった


だからこそ

何のためらいもなく


「みんな、元気かなぁ」

という言葉を口に出来たのだろう


だけど僕たちの旅は

まだ始まったばかりだ


これから先も

旅を続けていくことで


もしかしたら僕たちが

想像もつかないような出来事に

遭遇することもあるかもしれない



そう思いながら

僕はまた眠りについた



ピヨピヨピヨピヨ...

チュンチュンチュン...

チチチチチチチチ...


鳥のなきごえと共に

目が覚めた


木々の間から

太陽の光が照らされている



とても気持ちの良い朝だ


辺りを見渡すと

ゼンの姿はない


僕は体を起こしつつ

ゆっくりと体を伸ばした



血が勢いよく流れ

体全体を巡り


寝相によるコリが

いくらか解消されるのを確かめる


そうこうしている間に

ゼンが戻ってきた


どうやら朝食の食材を

取りに行ってたらしい


「今日の朝食は

 山の恵たっぷりのキノコ汁だ!」


ゼンは

テンションを上げながら


昆布と塩を

水が入った鍋に入れ

火にかける


数日前に立ち寄った

港町で買ったものだ



沸騰してきたところに

先ほど取ってきたきのこを投入し

少しの間煮込む


ゼンは

木で出来た器にきのこ汁を注ぐと

僕の目の前に置く


「さあ、これを食べたら

 ハツノ村に向けて出発だ」


僕とゼンの

ハツノ村に帰る旅が始まった

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