イモケンピは艦橋の中央に佇むリセノヴァを見据え、その赤い瞳に冷静な光を宿した。静寂の中、彼は低く、しかし確固たる声で語りかけた。
「リセノヴァよ。お前の意思は私が受け継ぐ。安心しろ。」
その言葉を聞いたリセノヴァは、一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに険しい顔を和らげた。彼は静かに頷き、深く息を吐いた。
「民を頼んだぞ。」
その声には力強さと、どこか達観したような静かな決意が込められていた。
イモケンピはゆっくりとリセノヴァに向けて手を差し出した。すると、漆黒の炎が生まれ、静かにリセノヴァの全身を包み込んでいった。炎は荒々しく燃え上がることなく、どこか穏やかに彼の体を覆い尽くしていった。
イモケンピの声はどこか哀愁を帯びていたが、その言葉には疑いの余地のない威厳があった。漆黒の炎はやがて静かに消え去り、そこに残ったのはほんの少しの灰だけだった。
強襲艦はエネルギーを完全に失い、まるでその存在そのものが意義を失ったかのように静寂に包まれた。
イモケンピはその場で目を閉じ、短く一言呟いた。
「これでいい……。」
その場にいたトラプトニアンたちは、イモケンピの圧倒的な姿に息を呑み、誰一人として目を逸らすことができなかった。漆黒の炎を纏い、闇と光を纏った翼を広げるその姿は、まさに神話から現れた存在のようだった。
最初に膝をついたのは一人だった。その者は震える声で呟いた。
「彼こそが……我らの神。」
その言葉は静かに広がり、周囲にいたトラプトニアンたちの心を次々と打ち抜いた。その声が連鎖し、やがて全員の胸に響き渡ったとき、彼らは全員膝をつき、イモケンピを見上げた。その視線には、もはや疑念も反抗も存在しなかった。ただ、揺るぎない畏敬と信仰が込められていた。
炎を纏った黒い翼を広げ、イモケンピは静かに彼らを見下ろした。その赤い瞳が一人ひとりを見つめるたび、彼らの中に新たな決意が芽生えるようだった。イモケンピが一歩前に進み、低く響く声で言葉を放つ。
「私は守護者として、この星と共にある。この地の水、この星の命を、私と共に守るのだ。」
その言葉に、トラプトニアンたちは深く頭を垂れた。その行動はもはや服従を超えたものだった。それは、自分たちの未来を託す崇高な信仰の証だった。
イモケンピの姿は、悪魔としての過去を完全に超越していた。漆黒の翼は闇を纏いながらも輝き、宇宙の命を象徴するような存在となっていた。彼を崇めるトラプトニアンたちにとって、イモケンピはもはや「王」ではなく、宇宙を導く「神」そのものだった。
闇を纏いながら輝く彼の姿が、太陽系に新たな時代の始まりを告げていた。イモケンピはかつて悪魔だったが、今や宇宙の守護者として君臨し、新たな伝説を刻み始めたのである。