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第73話 祖父の遺産

イモケンピが石船を混乱に陥れている頃、私はこの地に集まった異質な仲間たちの謎を解き明かすべく調査を開始していた。


悪魔、魔女、陰陽師、オカルト科学者、超能力者──これほど異なる存在たちが、互いに気付かぬうちに協力し、地球を守ろうとしているなんて、本当にそんなことがあり得るのだろうか。


私は彦作とドクター・ヴォーンを伴い、自宅の地下室を徹底的に調査することにした。あの悪魔を召喚した場所だ。もしこの地に秘められた謎があるとすれば、ここから始めるのが最適だと考えたからだ。


ドクター・ヴォーンは地下室にある古書の山を見て目を輝かせた。


「素晴らしい!実に素晴らしい!」と感嘆し、夢中で棚に並ぶ書物を手に取る。そこには、ここでしか見つからない貴重な原書が多数存在しているようだった。


一方、私は彦作とともに棚や壁を慎重に調べた。隠し扉や仕掛けがないかを確認するためだ。埃まみれの中での地道な作業が続く。


そのとき、ヴォーンが突然叫んだ。


「見つけたぞ!」


振り返ると、彼の手には一冊の古書が握られていた。だが、それはただの古書ではなかった。中身をくり抜いて物を隠せるように作られた、いわゆる「ブックセーフ」だ。


ヴォーンが慎重にその中身を取り出すと、一冊の手記が現れた。私たちはそれをそっとランプの前に広げた。


手記の表紙に書かれていたのは、見覚えのある文字だった。間違いない、これは祖父の手記だ。


手記には地球の未来に関することが記されていた。



「地球の崩壊が迫っている。地球は怒りに満ち、人類をリセットしようとしている。地球はこれ以上の崩壊を望んでいない。人類はやりすぎた。」



祖父の文字でそう書かれたその手記は、火山噴火、異常気象、地震、すべて自然の摂理のように見えるが、これは地球の意思だと主張していた。


ページをめくる手が止まる。読み進めるほどに、内容はますます深刻さを増していった。


「誰も地球の意思を本当に理解していない。政府間の協力は何の役にも立たず、すべてが利益追求のためのビジネス化に過ぎない。」


祖父はこの問題を根本的に解決するための糸口を求めていたようだ。そして、その転機となった出来事が記されていた。




「ある日、私はこの地で不思議な青年と出会った。彼の名はリセノヴァ。」


その青年は、地球の未来と宇宙の調和について語ったという。リセノヴァは不思議な話をいくつも持ちかけた。


「地球は宇宙の調和を保つために必要な存在だ。しかし、人類はその調和を乱している。一度、人類は浄化されるべきだ。」


その言葉に、祖父は衝撃を受けたようだ。それでも青年の言葉には、何か強い説得力があった。


「リセノヴァは、強力な力と指導力があれば、地球に調和をもたらせると言っていた。」


それ以降、祖父はリセノヴァと何度も対話を重ね、地球の未来について深く考えるようになった。




手記には続けて、祖父の苦悩が克明に記されていた。


「この状況を変えるには、人類をひっくり返すような大きな力が必要だ。しかし、全人類の意識を変えることなど到底無理だ。人は自分さえ良ければいいと考える。商業主義に走り、地球を守る意志など持てない。」


祖父はさらに具体的な解決策について模索していたようだ。


「人口を減らすことも容易ではない。化学兵器を使ったところで、その影響は局所的なものにとどまるだろう。ウイルスも、いずれ対策を講じられてしまう。」


祖父の言葉には、人類の愚かさへの失望と、それでも地球を救いたいという矛盾した希望がにじみ出ていた。


そして、リセノヴァとの別れが記されている。


「いつの日か、青年は突然姿を消した。しかし、彼との対話で私は一つの答えを得た。この地球を救うための思考を止めてはならない。」


「地球を救うには、人類を根本から変える力が必要だ。それが何であるかは分からない。しかし、その力を見つけ出すことが、私の最後の使命だ。」


手記の後半には、祖父が何を目指していたのか、その真意が克明に記されていた。

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