山田瓢六から送られてきたメールの内容が、頭から離れなかった。ドクター・マーカス・ヴォーンは、それが事実だと言っていた――。
王を殺したのか?
そのことが心の中で何度も響く。王の死がもたらした混乱、そしてそれを引き起こした地球側の一部の人間たち。穏健派のトラプトニアンたちは、この「王殺し」を許すのか?その答えを知る術はなかった。
だが、答えを知る必要はあるのかもしれない。今、私たちに求められているのは、この膠着した状況をどう打破するかだ。感傷に浸っている暇はない。
数日後、ドクターに依頼していた戦闘機が届いたとの報告が入った。驚くべき速さだった。
「こんなに早く手に入るものなのか?」
彦作が目を見開いて問いかける。
レイナの基地に運び込まれたのは、F-5 タイガー II、ドラケンの2機。どれも往年の名機だが、現代の技術からすれば「骨董品」と言っても差し支えない。さらに問題はその状態だった。
整備兵もおらず、予備パーツも皆無。何度か飛べば運用は不可能になるだろう。それでも、戦闘機を持つという事実が、私たちにわずかな希望を与えてくれる。
「使えるだけ使うさ。」
彦作は機体を見上げながら呟いた。その顔には、不安よりも決意が滲んでいる。
そしてもう一つの「補給品」――大量の酒も届いた。基地の片隅には並べきれないほどの酒瓶が山積みになっている。
「じーさんは、約束を守る男だな。」
イモケンピが皮肉めいた口調で言う。
私は少し微笑みながらも、気を引き締めた。この戦闘機と酒が、戦局を変える鍵になるのか、それとも単なる徒労に終わるのか。それを決めるのは、私たち自身だ。