私たちは細部に至るまで連絡を密に取り合い、慎重に潜入作戦の時期を見極めることにした。
基地の片隅で、彦作がヴァルハラ隊の面々と肩を組みながら笑っているのが目に入る。
「仲良くなったもんだな。」
イモケンピの声には少しの皮肉と、それを上回る興味が混じっていた。
私は微笑をながら、彦作の姿に目を向けた。
「こういう空気も必要だよ。」
私たちは酒を片手に談笑する彼らを遠巻きに見ながら、静かに基地を後にした。
「仲間って、いいもんだね。」
私がぽつりと言うと、イモケンピは軽く首を振った。
「そう思えるうちは、まだ人間だ。」
その晩、私は小さなランプの光で古い本を読んでいると、イモケンピが隣に座り、興味深そうに覗き込んできた。
「何を読んでいる?」
「昔話よ。弱者が知恵と勇気で強者を倒す話。」
私はイモケンピに本を見せた。
彼は薄く笑い、「人間はそんな空想話で自分を慰めるのか」と呟いた。
「空想でも、それが希望になるの。」私は視線を上げた。
イモケンピはしばらく黙っていたが、やがてぼそりと漏らした。
「希望か……悪くない。」
その言葉に胸が少し温かくなるのを感じたが、それが本当に彼の本心なのかは分からない。沈黙が続いた後、イモケンピはふと天井を見上げ、静かに言った。
「恐れに支配されるな。希望を灯し、自らの道を照らせ。」
その表情には、どこか遠い昔の記憶を抱えた者のような面影が漂っていた。絶望をもたらすはずの悪魔が「希望」を口にする――。
もしかすると、私は悪魔という存在を根本から誤解していたのかもしれない。