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第37話 再び飛び立つ撃墜王

翌朝、私は彦作を連れてレイナの基地を訪れた。まだ夜明け前の薄暗い中、冷たい空気が張り詰めている。隣で彦作が眠たそうに大きなあくびをし、肩をすくめながらついてきた。


基地の入口には、すでにレイナの姿があった。


「パイロットの彦作です。」


私が簡単に紹介すると、レイナは一瞥だけして短く頷いた。


「ついてこい。」


彼女は挨拶もそこそこに私たちを作戦司令室へと案内した。そこにはすでに兵士が集まっており、緊迫した雰囲気が漂っていた。



レイナがマップを指し示しながら話し始めた。


「偵察チームから、この山岳地帯の外縁部まで敵の機械歩兵が近づいてきているとの報告があった。我々はこの機械歩兵を殲滅する。アルヴァー、説明しろ。」


情報士官のアルヴァーが前に出て、地図を広げた。


「敵は12体、4体ずつの3個小隊です。現在の位置はこの山の反対側の中腹に到達しています。ここです。」


そう言って地図の一点を示した。


「軽武装で、大規模な攻撃ができる武器は持っていません。司令用の無人機も確認できないため、目的に特化した特務部隊と考えられます。我々はこの部隊が山のこちら側の中腹に届く前に迎撃し殲滅します。」


レイナが一歩前に出て、鋭い声で指示を続けた。


「敵に位置を知られないよう、迫撃砲や誘導弾の使用は禁止。通常のライフル、対人地雷、そして対物ライフル2丁を使用し、確実に敵を仕留める。初撃で敵の4体を排除する。第二撃はT-28が上空から攻撃を加える。」


「T-28?…あんな骨董品のプロペラ機が使えるんですか?」


彦作が発言をすると、アルヴァーが薄く笑みを浮かべた。


「オンボロだが、飛ばすだけなら問題ない。敵の戦闘機に見つかればただの的だが、低空飛行で山間部を飛べば、察知される可能性は低い。お前の任務は山沿いを低空で飛行し、敵を発見次第、機銃掃射を行うことだ。やれるか?」


彦作はしばし黙って考え込んだが、その目に決意を宿し力強く頷いた。


「はい、まかせてください!」


レイナが彦作をじっと見つめ、その決意を確認するように言葉を続けた。


「地上部隊は明朝0800出発。山中で奇襲ポジションを確保し、敵を待ち伏せる。夜間の戦闘になる。撃墜王は連絡あるまで滑走路で待機。作戦開始後、低空で侵入し敵を攻撃しろ。指示は無線で出す。」


ブリーフィングが終わり、レイナが私とイモケンピに目を向けた。


「お前たちも来るか?」


その言葉に、イモケンピが前に出てきた。


「いいだろう。面白くなりそうだ。」


私も一瞬躊躇したが、すぐに覚悟を決めて返事をした。


「私も参加します。」


レイナはわずかに驚いたようだったが、それ以上何も言わず、短く頷いた。


解散後、私たちは基地を後にした。


まだ朝焼けが空を染め始めたばかりの冷たい空気の中、私は彦作とイモケンピと共に家路についた。


「お前、本当にやるのか?」


イモケンピが彦作を横目で見ながら尋ねた。


「やるさ。」


彦作は自信満々の笑みを浮かべたが、その手がわずかに震えているように見える。


「撃墜王の名に恥じないようにな。」


イモケンピの皮肉に、私は苦笑しながら歩き続けた。


明朝、山岳地帯での作戦が始まる。成功するかどうかは分からないが、それでも私たちは進むしかなかった。

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