レイナは戦場でその力をいかんなく発揮していた。地形、気候、戦力差――彼女はあらゆる要素を「見通し」、それらを駆使して敵を翻弄する。戦略だけでなく、彼女が「大地」とつながり、自然界の力をも味方につけているのだという噂は、もはや否定できなかった。
「彼女の戦術は、ただの計算や経験だけではない。」
イモケンピが低く呟く。
「大地そのものの声を聞いているのだろう。だからこそ、部下たちにとって彼女は信仰の対象となる。」
ヴァルハラ隊の兵士たちは、彼女をただの上官としてではなく、信仰の対象のように見ている。彼女の指示に従えば、どんな状況でも勝利を手にできるという確信があるからだろう。
「あれが本物の指揮官だ。部下は彼女をただの命令者ではなく、信頼と敬意の象徴として見ている。あのように崇拝される指揮官は、悪魔ですら滅多にお目にかかれない。」
イモケンピの声に、普段の皮肉めいた響きはなかった。
私はその言葉を聞きながら、彼女が去っていく背中を見つめた。
「また話をしよう。」
それだけを言い残し、彼女は兵士たちとともに基地の奥へと姿を消していった。
レイナが去った後、イモケンピがふと真剣な表情を見せた。
「あの魔女、悪魔との関わりを持たない純粋な魔女だな。この世界の大地とつながっている本物の魔女だ。」
「本物の魔女……?」
私はその言葉を繰り返した。
「そうだ、この世界の草木、気候、天文を熟知し大地そのものとつながっている。悪魔や神の干渉を必要としない、純粋に地球に根差した存在だ。」
「神のような存在?」私は眉をひそめた。
「いや、神ではない。」
イモケンピは首を振り、ゆっくりと続けた。
「この大地の使役者であり、大地の代弁者と言った方が近いかもしれない」
「大地の使役者か……。」
その言葉の響きに、私は思わず感嘆の声を漏らした。
イモケンピが少し微笑みを浮かべながら続けた。
「その力があるから、天才的な戦術を展開できるのだ。そして、彼女が魔女であることを知れば、敵も味方も恐れ敬う。彼女はそれほどの存在だ。」
私はふと考えた。
「でも、彼女が大地とつながっているとして、それは本当に人類を救うためのものなのか?」
イモケンピが意味深に笑った。
「それはお前が見極めることだ。彼女の目的が真に地球のためなのか、それとも彼女自身のためなのか――。」
その言葉に、私は胸の奥にかすかな疑念を抱いた。果たして、レイナ・ヴァーゴという魔女の真の目的は何なのか。そして、彼女が抱える使命は、私たちの未来にどのような影響を及ぼすのか。