「私は、オカルトオタクなんだよ。悪魔、ゴースト、UMA、それに宇宙人まで、幅広く嗜んでいる。」
ヴォーン博士は自慢げに語りながら、私たちを見回した。その目には好奇心と狂気の輝きが混ざり合っている。
「私も悪魔の召喚を試したことがあるが、呼び出せなかった。『悪魔召喚の書』は世界中にあるが、本物の原書はたった一つしかない。正しい召喚方法はその原書にしか記載されていないんだ。」
えっ、この地下室にあるのがその原書なの? なんで祖父がそんなものを持っていたのだろう? 思わず心の中でつぶやいた。
「それにしても、あのエイリアンの技術もすごいぞ。」
ヴォーンは身振り手振りを交えながら、話を続ける。
「母船の構造やエコシステム、文化的背景に至るまで、彼らの存在そのものが哲学なんだ。母船は単なる移動型居住施設ではなく、彼らの生存思想の象徴といえる。」
彼の熱弁に引き込まれながら、私は口を開いた。
「なぜ、ここに未知の存在がいるってわかったんですか?」
ヴォーンはにやりと笑った。
「エネルギーだよ。膨大なエネルギー量をレーダーがキャッチしたんだ。町が吹き飛ぶほどの規模だ。最初は敵の攻撃かと思ったが、被害は一切出ていない。調査してみると、それは短時間かつ局所的に発生した異質なエネルギーだった。」
さらに身を乗り出しながら続ける。
「3か月前のことだ。研究室で居眠りをしていたら、誰かが私を揺すって起こそうとしている感覚がした。驚いて目を覚まし、振り返ると……観測モニターに異常数値が表示されていた。」
彼の声は徐々に熱を帯び、手元の資料を指で叩きながら言葉を重ねていく。
「データを分析した結果、それが特殊なエネルギーだとわかった。時空を歪めるほどの圧倒的なエネルギーだよ。ここからは私の専門分野になるが、その性質はゴーストや未知のエネルギー体が発するものと非常によく似ていた。ただし……場所を特定するのには苦労したがな。」
「それって……私が悪魔を召喚したときの……?」思わず呟く。
「おそらくそうだ。」ヴォーンは頷き、目を輝かせた。
「実は……」
ヴォーンの話に感化されたわけではないが、私は悪魔との契約で侵略者を追い払おうとしていることを打ち明けた。彼なら信頼できる人物だと直感的に思ったのだ。
ヴォーンは一瞬驚いた顔を見せたが、すぐにその瞳が好奇心に輝いた。
「それで? どんな方法を使うんだ? 君の話にはまだ続きがあるだろう?」
その問いに答えたのは、私ではなくイモケンピだった。彼は椅子に深く座り直し、冷笑を浮かべてヴォーンを見つめた。
「計画中だ。貴様のような人間の知恵を借りるのも悪くないな。」
「なるほど。重要なのは結果だ。目的が達成できるなら、私は協力する準備がある。」
ヴォーンの言葉は真剣そのもので、イモケンピもそれを面白そうに見つめていた。
「見返りは何を求める?」
ヴォーンは即答した。
「私は悪魔を知りたい。もっと深く、君の存在そのものを解明したい。」
奇妙な三者関係がこうして成立した。ヴォーンは悪魔の存在に強く興味を惹かれていた。同時に、イモケンピも複製人間の技術に興味を示しているようだった。
イモケンピは笑みを浮かべながらヴォーンに向かって一歩近づいた。
「お前が作る複製人間、その肉体に私が宿ることができるかもしれないな。興味が湧いてきたぞ。」
「試してみる価値はある。」
ヴォーンは研究者としての情熱を隠そうともせず、そう答えた。
「それが成功すれば、君は影の存在ではなく、永遠に体を持って行動できる。」
私はその光景を見ながら、胸の奥に奇妙な不安を感じていた。これが戦争を覆す鍵になるのだろうか。それとも、さらなる混乱を呼ぶだけなのか。
だが、それを考える暇はなかった。いずれにせよ、我々は協力することになった。この狂気じみた賭けに、地球の未来がかかっている。
「ところでドクター、キャトルミューティレーションはグリシュヴァ星人の仕業だって知ってました?」
私はドクターを見下すように軽く笑みを浮かべながら、誇らしげな視線を向けると、ヴォーンは驚愕の表情を浮かべた。
「なっ……グリシュヴァ星人って何!? 君はどうしてそれを……?」
私は誇らしげに微笑んだ。