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第22話 奇妙な同盟

その夜、私たちはカリドゥスの研究施設へと足を運んだ。


「ボス、ここは?」彦作が周囲を見回しながら尋ねる。


「特別な場所です。」私が答えると、奥からカリドゥスの穏やかな声が聞こえた。


「お客さんが増えたようですね。」


「あの外交官!」彦作が驚きの声を上げる。


彦作の視線がカリドゥスから彼の背後に広がる巨大なテラリウムに移る。そこに広がる未知の世界を目にした瞬間、彼は思わず息を呑んだ。奇妙な色彩の植物と動物が、まるで異世界を再現したかのように動いている。


私たちはテラリウムを背にして席に座り、お茶を飲みながら話を始めた。


「ほう、星を守りたいエイリアンと、使い捨てられた人間がここで話し合うとはな。面白い絵面だ。」


背後からイモケンピの皮肉交じりの笑い声が響く。


「今の声は……?」


彦作が肩越しに振り返る。


「誰だ?」


「お前には見えない相手がしゃべってるのだよ。」


イモケンピが楽しげに声を上げる。


その瞬間、イモケンピがゆっくりと彦作とカリドゥスの肩に触れた。薄暗い部屋の空気が揺れ、異様な気配が満ちる。


「なんだと……!」


彦作の驚愕した声が響く。目の前に、中性的で整った顔立ちをした漆黒の霧のような存在――イモケンピが立っている。


「私が見えるようになったか。」


イモケンピは赤い瞳を輝かせて笑った。


「ようこそ、私の世界へ。」


「誰だ……?」


彦作は低く呟き、視線を鋭く巡らせた。


「ボス、これは一体何なんだ!」


「悪魔です。」


私はお茶をすすりながら静かに答えた。


カリドゥスは思ったより冷静だった。


「悪魔とは……地球の神話で語られる存在ですね。」


カリドゥスがゆっくりと口を開く。


「悪魔……。」


彦作は眉をしかめたまま私を見つめた。


「本気で言ってるのか、ボス?」


私は静かに視線を二人に向けた。


「これが、私の秘密です。私はこの悪魔とこの戦争を終わらせます。」


「戦争を終わらせる……?」


彦作は訝しげに眉をひそめた。


私は毅然とした口調で続けた。


「私は、あなたたちの信頼を得るために秘密を明かしました。この悪魔と私に協力してください。」


カリドゥスは少しの間黙り込んだ。そして、赤い瞳を持つイモケンピをじっと見つめ、不思議そうに呟いた。


「あなたの存在は……私たちトラプトニアンの研究にも記録がない。異質な生命体か、あるいはエネルギー体なのか……?」


イモケンピは、皮肉な笑みを浮かべた。


「定義するのはお前たちの自由だが、俺はただの悪魔だ。」


彼は視線を彦作に移し、わざとらしく口元を歪めた。


「そっちのバイク乗りはどう思う?」


彦作はしばらく困惑した表情を浮かべていたが、やがて口元にニヤリと笑みを浮かべた。


「悪魔だろうがエイリアンだろうが、俺のボスが信じるなら関係ねえさ。わざわざ言うことでもないが、俺は協力する。」



その言葉に、カリドゥスも少しだけ口元をほころばせた。


「奇妙な同盟ですね。戦いを望まない私にも、協力できることはあります。星を守るために。」



イモケンピが横目で私を見て、珍しく柔らかな笑みを浮かべる。


「お前の仲間たち、いい奴らじゃないか。さて、この連中と何を始める?」


私は深く息を吸い、胸の奥で固めた決意を言葉にした。


「この星を守る。私たちが持てるすべての力を使って。」


それは、異質な存在たち――悪魔、人間、エイリアン――が初めて同じ目的のために手を取り合った瞬間だった。


カリドゥスの瞳には微かな期待が宿り、彦作は拳を握りしめて微笑んだ。そしてイモケンピは赤い瞳を輝かせながら、不敵な笑みを浮かべていた。


イモケンピが口元をわずかに引き上げ、不敵な笑みを浮かべる。


「みんなで滅びの未来に向かうか、それとも生き残る未来に賭けるか……どっちに転んでも面白いだろう?」


三種族の協力は、まだ脆く頼りない絆に過ぎなかい。しかし、その瞬間から、この戦いは新たな局面を迎えた。それは、ただの生存を超えた目的――星を守るための戦いの始まりだった。

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