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第18話 信じられる仲間

東雲彦作が司令部に配属されてから数日が経過した。


破天荒で、いつも自信たっぷりの態度。しかしその裏に隠された懐疑的な目が、政府や上層部に対する不信を物語っている。彼は孤独を選びながらも、どこか信頼できる仲間を求めているようだった。そんな彼が、今日は特に疲れているように見えた。


私の机の前で、彼は頬杖をついてこちらを見ていた。


「ボス、俺に聞きたいことがあるんじゃないですか?」


不意打ちのような言葉だった。私は一瞬戸惑ったが、イモケンピの低い笑い声が背後で響く。


「ほら、こいつ、面白いこと言ってるぞ。遠慮せず聞いてやれ。」


私は咳払いをして、意識的に落ち着きを装った。


「超能力の話?あの、視野が狭くなるってやつ?」


東雲は微かに笑みを浮かべながら、ポケットから何かを取り出し、机の上にそっと置いた。それは一発の弾丸だった。


「その疑いを晴らします。これを俺にめがけて思いっきり投げてください。」


「この距離で?」


私は訝しげにそれを手に取る。彼の視線にはどこか挑発的なものがあった。試すような目。それが何故か気に障り、私は言われた通りに弾丸を彦作の顔面めがけて投げた。


投げた瞬間、彦作の指が弾丸を掴んでいた。反射神経というには速すぎる。


「どういうこと?」私は驚きの声を抑えられなかった。


「集中力が高まると、周りが消えて対象物だけが見える。そして、相手の次の動きが読めるようになる。」


「読める?」


「何ていうか、見えるんだよ。少し先が。あの時もそうだった。」


「あの時?」


彦作は視線を少しだけ逸らした。初めて彼がほんのわずかに気弱な表情を見せた気がした。だが、すぐにいつもの皮肉めいた笑みが戻る。


「総理官邸の防衛作戦の時だ。仲間を救えなかったが、敵の巨大兵器の動きを読んで、相手の弱点に弾を撃ち込むのは簡単だったよ。」


その言葉には、彼の心に刻まれた深い傷がにじんでいた。


報告書では、彦作はたくさんの部隊をたらい回しにされ、どの部隊でも新人扱いされた彦作は常に浮いた存在だった。




「ボス、教えてくれ。」


彼が不意に言った。その声はこれまでに聞いたことのない、真剣で孤独な響きを帯びていた。


「教えるって、何を?」


「どうすれば信じられる仲間が作れるんだ?」


私は言葉を失った。戦場で孤独を選び続けてきた男が、こんな言葉を口にするとは思わなかったからだ。彼の瞳には、これまで私が見てきたどんな表情とも違う、純粋な渇望が宿っていた。


イモケンピが私の耳元で囁く。


「いいじゃないか。こいつを仲間にしてやれ。心に空っぽな場所を持つ奴は、お前にとっても価値がある。」


私は言葉を選びながら口を開いた。


「それはあなた次第です。」



彦作は目を細め、深い息を吐き出した。


「……難しいな。」


「簡単です。他人を理解するところから始めてください。」私は静かにそう言った。


彦作はしばらく考え込むように黙っていたが、ふっと力を抜くように無造作に笑った。


「なら、ボスが俺を理解してくれ。そうすりゃ、俺も少しはやりやすい。」


そう言うと、照れ隠しのように資料をまとめる作業に戻った。


その夜、自宅で一息つき、静けさに包まれた時間を過ごしていたとき、イモケンピが隣でぽつりと呟いた。


「お前、いいボスになったな。」


「何を言ってるの?」


「あいつはお前に付いていくよ。俺が保証する。あいつの力、試してみるといい。」


イモケンピの赤い瞳が揺らぎ、どこか楽しげだった。彦作との間に生まれた新たな絆が、未来にどう影響するかは、まだ分からない。


だが、私は彼の孤独に触れた時、確信した。彼もまた、私たちの戦いに欠かせない存在だと。

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