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第11話 貴重な資源を守る者

「ところで、キャトルミューティレーションや家畜の奇妙な死体事件って、あなたの仕業?」


私はカリドゥスをじっと見つめながら尋ねた。


「私がそんなことするわけないだろ!」


カリドゥスは慌てたように声を上げた。その仕草は、意外にも人間臭かった。


「じゃあ、誰がやってるの?」


「それは我々ではありません。他の惑星から来た者たちの仕業でしょう。」


カリドゥスの表情が急に真剣なものへと変わった。「地球の言葉で言えば、グリーゼかケプラーあたりの星から来た種族だと思います。この星は豊かな生命で満ちている。多くの異星人にとって、非常に興味深い実験場なんです。」


私の心が軽く跳ねた。「他の惑星?」


カリドゥスは少し考え込んでから、続けた。


「あくまで私の推測ですが、キャトルミューティレーションを行っているのはグリシュヴァ星人。人体に金属を埋め込んでいるのはスラドリア星人。ミステリーサークルはフリルプ星人。そして拉致を行っているのはオルファグリ星人……といったところでしょうか。」


「そんなに?」


私は驚きのあまり、声を張り上げてしまった。


カリドゥスは視線を私に戻し、静かに頷いた。


「その通り。この星は、宇宙全体から注目を集めています。我々がここにいる限り、他の者たちは直接干渉することはできないでしょう。しかし、もし我々がいなくなれば、状況は一変するかもしれません。」


「あなたたちは地球を守るためにいるの?」


私の声には皮肉が混じっていた。


カリドゥスは感情を一切見せずに答えた。


「守るというより、管理していると言った方が正確です。だが、我々がいなくなれば、この星はすぐに別の勢力の手に落ちるでしょう。」


その場に一瞬、重い沈黙が流れた。イモケンピが耳元で低く嘲笑を漏らす。


「守護者気取りか?」


私は思わずイモケンピを睨んだが、カリドゥスは気にする様子もなく続けた。


「生命の源である水は、宇宙全体でも非常に貴重な資源です。それはどの星の生命体も知っています。もし誰かがその資源を強奪しようとすれば、瞬く間に資源の取り合いの争いが始まるでしょう。その結果、この星は死の星となる。」


カリドゥスの声には、冷静さの裏に潜む切迫感が滲んでいた。


「皆、争いは避けたいと思っています。だからこそ、我々がここにいることが重要なのです。我々が地球にいる限り、他の勢力は手を出しにくい。」


カリドゥスの冷たい表情は、どこか遠い場所を見つめているようだった。


「私は母星を回復させる研究をしています。我々がしていることは科学的な探究心による行動です。地球の資源や生物が母星の環境でどう適応するかを知ることは、私たちの復興に必要なデータです。無意味な行為ではありません。」


その言葉に、私はこの地球が抱える複雑な状況を改めて思い知らされた。


カリドゥスは柔らかな笑みを浮かべると、続けた。


「私の母星には空を舞う生物がいません。太古の昔には生息していたらしいのですが、今はもう失われてしまった。だから、トラプトニアンは地球の空を舞う生物に驚いています。」


彼の瞳が輝く。


「私はいつか、母星の空に鳥を放ちたい。それが私の夢です。」


「ふーん。」


私はそっけなく返したが、彼の情熱に少しだけ心を動かされたのを感じていた。

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