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第6話 逃避行

 食糧持たず、お金持たずの生活を、森の中で散々迷った末に二日間過ごして、やっと分かった事がある。


 どうやらここは俺たちが最初にいた地、大樹王国と、その自治区オカマシティの狭間に位置する場所らしかった。


「オカマシティってなに?」


「世界中のオカマや男色を好む人が集まる連邦国家だよ」


 その筋の人達にとって、素晴らしいパラダイスみたいな場所なんだろうなって、俺は思った。


 オカマか。


「そういえばオカマというかマカオは?」


「マカオ? そういえば最近、見てないね」


 マカオ強姦未遂事件。確か捕まえに来た憲兵団がそんな事を言っていた。


 オカマは何故、どういう目的で俺を貶めようとしたのか。理由も動機も推測できない。


 だから直接会って話したい。問題はどうやって見つけるか。


 いや、丁度目の前にオカマシティというあからさまな街があるじゃないか。


「もしかしたらオカマもそこに居るかもしれない」


「オカマ? そりゃあ、オカマシティには至る所にいるでしょ?」


「オカマというかマカオ。俺たちの仲間だったマカオが居るかもって話だ!」


 オカマは何故こんな事をしたのか。何か理由があったのか。俺は知りたい。


「ああそっち! マカオなら居るかもしれないね。あたしとしてもマカオに言いたいことあるし、いっちょ入ってみますか!」


『無事に入れたらな』という声が聞こえたので、振り返って見ると、憲兵団がゾロゾロと集まっていた。


「オカマと一回話し合いたかったが、叶いそうも無さそうだ」


 仲間鼓舞発動。ファリアの全能力を底上げ。


 多対一はファリアに任せるとして。


 俺は彼女を回復させつつ適時、不意打ちで相手の手数を減らす方向でいく。


 丁度目の前には、竹刀代わりになりそうな木の棒が落ちている。予定外だが好都合だ。


「ヤー!」


 気合一閃、俺は相手の胴を狙って木の棒を振り抜いた。


 憲兵の横腹鎧に当たったが、木の棒がへし折れて大したダメージを与えることが出来なかった。


 一方、ファリアは魔法連発で憲兵団達をギッタンギッタンに薙ぎ倒している。



         ◇



 仲間鼓舞の難点、俺自身には効果が適応されないこと。俺自身は何か秀でたものは無い。


 そこで俺はこの数日間、自分で戦うための研究をした。


 ここは一つ、お披露目といこう。


「ウォーター!」


 まず、俺は大量の塩を両手に持ったまま、コップ一杯分の水量の初級水魔法を憲兵団に乱射した。


 大量の塩と水魔法がいい感じに混ざり合い塩水となる。


 次に塩水を被った憲兵団に向かって、静電気が起きた程度の威力である初級雷魔法を発動しながら、俺が飛び込む。


 静電気程度じゃ足りない。でも雷魔法は初級しか扱えない。どうやって火力上げようか!


『今後、雷魔法は使わない!』


 そんな即席の縛りを結ぶと、両腕からおびただしい電流が流れ出す。


「これなら!」


 塩水は電気をよく通す。


「アギャァァァァァ!?」

「ピャァァァァァ!?」

「ビビビビビビ!?」


 漏電は恐ろしい。元は静電気程度の威力なのに、全員しばらく動けないレベルの威力を出せる。


 対人限定だが、有効的な戦い方だ。難点は自分も痺れること。


「すごい……初級魔法を組み合わせるとこんな事出来るんだ」


「ガガッ、片付けたぞぉ。ファリアさん、俺を運んでくれないか?」


 こうして俺たちは、追っ手から逃亡することに成功した。


「ごめん。あたしも魔力すっからかんで立ってるのも精一杯だから、引きずって運ぶね」


「……マジか」

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