目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第3話 旅立ち

 命じられてしまったものはしょうがない。帰るために魔王を討伐しなければと、納得はしてないが、そう思った。


 旅立ち二日目は街の外周辺で、弱いモンスター狩りに徹底していた。


「仲間鼓舞を使った時と、使わなかった時の火力差がエグいなぁ」


 大体二倍と言ったところか。


 次々と街周辺に湧く雑魚モンスターが一掃されてく様は、まさに壮観だった。


 戦ってみて分かったことだが、俺でも一通りの初級魔法を操ることが出来た。


 水、氷、火、土、風、電。威力は全くないが、魔力消費も少ないし何かしら使えそうだ。


 例えば、水と火でお湯ができるし、風と土を組み合わせたら目眩しに使えたり、水と雷で威力上げたり。


「勇者様あぶない!」


「なっ、痛っ!?」


 考え事をしていたら、ネズミみたいなモンスターに噛み付かれた。


 何とか引き剥がせたが、腕の肉を喰われ、俺は激痛で動くことが出来なくなってしまった。


 冗談じゃない。これが首に来てたらきっと頸動脈を噛みちぎられていた。


 やっぱり死と隣り合わせじゃないか」


「勇者オオモリ! マジックカウンターを使いなさい!」


 遠くからオカマの声が聞こえてくる。俺はその声に従ってマジックカウンターを発動した。


 すると『キィッ!?』というモンスターの叫び声が俺の耳にも流れてくる。


 見ると先程噛み付いてきたモンスターから大量の血が流れていた。


「マジックカウンターはね、食らったダメージをそのまま攻撃した相手に返すことが出来る技なのよ!」


 自分が攻撃を食らっても、相手にその分ダメージが行くって感じなのか。なかなか有効なスキルだ。


 俺はヒールで傷を癒した後、ファリアを探した。見つけた時には、ファリアは倒れていた。


「フ、ファリアァァァ!?」


 急いで駆け寄ると、彼女の声が微かに聞こえてくる。


「ウゥ……大丈夫、ただの魔力切れです」


「……魔力切れるとそうなるのか?」


「……うん」


「仕方ない。今日は帰ろう」


「そうね。そうしましょ」


 オカマも丁度戦闘が終わったらしく、あっさりと受け入れた。


「この世界では寝れば魔力回復するらしいし、ファリアは俺がおぶっていこう」



        ◇



「あたしは天涯孤独だったから、おんぶされた事なかったけど、いいね……」


「そうかぁ。そりゃあよかった」


 天涯孤独とか貧民層生まれとか、安易に触れていいものなのだろうか?


「勇者様が来てくれなかったら、あたしは路頭に迷うところだったからね」


「そうなのか? 今日見た感じ強そうだったけど、どこかしら需要あると思うけど」


「自分で言うには情けないけど、本来の実力はこの地帯のモンスターに苦戦するレベルだから。今回も何であたしが選ばれたのか……」

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?