命じられてしまったものはしょうがない。帰るために魔王を討伐しなければと、納得はしてないが、そう思った。
旅立ち二日目は街の外周辺で、弱いモンスター狩りに徹底していた。
「仲間鼓舞を使った時と、使わなかった時の火力差がエグいなぁ」
大体二倍と言ったところか。
次々と街周辺に湧く雑魚モンスターが一掃されてく様は、まさに壮観だった。
戦ってみて分かったことだが、俺でも一通りの初級魔法を操ることが出来た。
水、氷、火、土、風、電。威力は全くないが、魔力消費も少ないし何かしら使えそうだ。
例えば、水と火でお湯ができるし、風と土を組み合わせたら目眩しに使えたり、水と雷で威力上げたり。
「勇者様あぶない!」
「なっ、痛っ!?」
考え事をしていたら、ネズミみたいなモンスターに噛み付かれた。
何とか引き剥がせたが、腕の肉を喰われ、俺は激痛で動くことが出来なくなってしまった。
冗談じゃない。これが首に来てたらきっと頸動脈を噛みちぎられていた。
やっぱり死と隣り合わせじゃないか」
「勇者オオモリ! マジックカウンターを使いなさい!」
遠くからオカマの声が聞こえてくる。俺はその声に従ってマジックカウンターを発動した。
すると『キィッ!?』というモンスターの叫び声が俺の耳にも流れてくる。
見ると先程噛み付いてきたモンスターから大量の血が流れていた。
「マジックカウンターはね、食らったダメージをそのまま攻撃した相手に返すことが出来る技なのよ!」
自分が攻撃を食らっても、相手にその分ダメージが行くって感じなのか。なかなか有効なスキルだ。
俺はヒールで傷を癒した後、ファリアを探した。見つけた時には、ファリアは倒れていた。
「フ、ファリアァァァ!?」
急いで駆け寄ると、彼女の声が微かに聞こえてくる。
「ウゥ……大丈夫、ただの魔力切れです」
「……魔力切れるとそうなるのか?」
「……うん」
「仕方ない。今日は帰ろう」
「そうね。そうしましょ」
オカマも丁度戦闘が終わったらしく、あっさりと受け入れた。
「この世界では寝れば魔力回復するらしいし、ファリアは俺がおぶっていこう」
◇
「あたしは天涯孤独だったから、おんぶされた事なかったけど、いいね……」
「そうかぁ。そりゃあよかった」
天涯孤独とか貧民層生まれとか、安易に触れていいものなのだろうか?
「勇者様が来てくれなかったら、あたしは路頭に迷うところだったからね」
「そうなのか? 今日見た感じ強そうだったけど、どこかしら需要あると思うけど」
「自分で言うには情けないけど、本来の実力はこの地帯のモンスターに苦戦するレベルだから。今回も何であたしが選ばれたのか……」