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勇者大盛くん〜ベンチウォーマーは伊達じゃない
勇者大盛くん〜ベンチウォーマーは伊達じゃない
まちゃかり
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年01月23日
公開日
7,154字
連載中
 謎のオカマに導かれ異世界転移した、たくましい身体をしている大盛くんは、王様に指名され勇者となった。

 高校時代、強豪剣道部のベンチとしてベンチを湧かせていた能力を活かすチャンスだと意気込む大盛くん。

 しかし、オカマを襲ったという冤罪をかけられて、結果的に王国から追われる立場になってしまう。

 頼れるレズと仲間たちが織り成す、たまに大盛くんが活躍するかもな異世界冒険譚。

第1話 マカオ•ルギラウ

 自分の人生に予定を立てた覚えは無いのだけど、予定外だ、と思う事はたくさんあって、飽きない人生だなって思う。


 予定は未定なのに、予定外はあるんだ。


 部活だって、剣道でバリバリ活躍しようって意気込んでたのに、結局万年ベンチだった。


 就職活動もさっさと終わらせてやるぞーって意気込んでたのに、内定先が決まらないままもう三月だ。


 そんな時、オカマに出会ったのも、きっと予定外なのだろう。


「あらーいい男! あなたを勇者としてお迎えしにきたわー!」


 全身ゴリラみたいなオカマだった。トサカ頭で、そんじゃそこらのプロボクサーにも負けないようなフィジカルの持ち主と見える。


「いっけなーい! 異世界行きのゲートが閉じるわ! 勇者様行きましょう!」


 俺は有無を言う前にオカマに手引きされ、虹色に輝くゲートへダイブすることになった。



         ◇



「鳥羽族は今日も城下街の空を滑空し、水魔法で畑から野菜が咲き乱れ、魔王軍は隣国を滅亡に導いたこのご時世、よく来てくれたな勇者殿よ」


 気づけば城内に居て、俺たちは王様の話を聞かされていた。状況がイマイチ飲み込めない。


 今日も予定外だらけだ。


「前置きは省略して単刀直入、本題に入らせてもらおう。勇者殿に世界征服を企む魔王を倒してほしいのだ。仲間と金はこちらで用意しよう」


「あの、つかぬ事をお聞きしますが、俺って本当に勇者なのですか? 俺はただのベンチウォーマーなんですけど?」


「勇者殿の能力は事前に紙に記してある。読んでみい」


 俺は王様から手渡された資料を訝しみながら読んでみた。


◇ヒビキ•オオモリ18歳


筋力 そこそこ

知力 そこそこ

魔力 つよつよ

運力 つよすぎ

走力 そこそこ


スキル 仲間鼓舞•ヒール•マジックカウンター。


 異世界語読める事にも驚いたが、このスキルはなんだ?


 ていうかスキルってなんだ? ポケモンでいう特性みたいなものなのだろうか?


「ヒールやマジックカウンターも優秀だが特出すべきは仲間鼓舞だ。文字通り仲間の能力を数段上げる、仲間鼓舞のスキルを持ってる者は人類史で二人目なのだ」


「だからこの世界に連れてきたってわけよ。ねっ、勇者様!」


 なるほど、つまり俺は選ばれた存在ってわけね。


「……死にたくないんで帰っていいっすか?」


 一瞬、空気が冷たくなった。と思ったら急にオカマが俺の胸ぐらを掴み、至近距離で『勇者様の自覚を持ちやがれー!』と叫び散らかし始めた。


 だって死にたくないんだもん。このご時世、異国の地で命懸けれるかよって思っちゃったんだもん。


 鼓膜が破ける音と共に、俺は元の世界に帰りたいと心の底から願った。





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