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第3話 葵の選択

第2章(続き):葵の選択


アレックスは葵を見つめたまま、頭の中が混乱していた。なぜ自分が「婚約」などというばかげたことに選ばれたのか、それに彼女が言う「家族のリーダーを引き継ぐ」とは何を意味するのか、全く理解できなかった。


真剣で威厳ある姿勢を崩さない葵は説明を始めた。

「分かる?アレックス、私は長い歴史を誇る家系の出身なの。私たちの家はこの国でも非常に影響力のある家族として知られているわ。そして、私が生徒会長を務めていることも知っているでしょう。でも、私の家には、特に継承に関しては非常に厳しいルールがあるの。」


アレックスは彼女を見つめながら、困惑を隠せなかった。

「継承?何のことだ?それに、俺がどうして君の家族のリーダーなんかを引き継がなければいけないんだ?」


葵は一歩前に出て、彼をじっと見つめた。

「私の家族は確かに大きな力を持っているけど、未来を導ける強い意志を持つ人物が必要なの。私は一人娘だから、本当なら兄がその役割を担うはずだった。でも、今は兄がいない状況なのよ。だから、アレックス、あなたが必要なの。」


アレックスは何度も瞬きをし、状況を完全には理解できなかった。

「俺が?なぜ俺なんだ?」


葵は腕を組み、まるで挑戦的な表情を浮かべて彼を見つめた。

「なぜなら、アレックス、あなたは他の人と違うから。表面的な感情に流されず、賢いわ。私はずっとあなたのことを見てきたの。この学校に入学してからのあなたを。そして私は適当に誰かを選ぶような人間じゃないわ。」


生徒会のメンバーたちは興味深げに視線を交わしたが、誰も話を遮ろうとはしなかった。アレックスは居心地の悪さと驚きが入り混じった感情を抱えていた。ただの高校生活がこんな形で重大な話と絡むなんて思ってもみなかった。


常に微笑んで落ち着いているように見える春は、興味津々な様子で会話を見守っていた。

「確かに会長の目利きはすごい。彼女が選んだというなら、きっと何か理由があるんだろう。」


窓際に座っていた短髪の背の高い少女は腕を組みながら口を開いた。

「でも、アレックスが本当に適任かどうか、少し疑問だね。本人も納得していないみたいだし。」


葵は素早く彼女を見やったが、その声色は少しも揺るがなかった。

「彼しかいないのよ。それに、彼に他の選択肢があるとも思えないわよね、アレックス?」


アレックスは唾を飲み込んだ。

「どうしてこれを先に話してくれなかったんだ?それに、もし俺が断ったらどうなる?」


葵は真剣な表情でアレックスを見つめ続けた。

「断るなんて選択肢はないわ。心配しないで、アレックス。慣れれば簡単よ。これは私たちの愛のためにやっていることなの。」


アレックスの心の声:

「何だこれ...。信じられない。こんなことに巻き込まれるなんて。でも、葵の目を見ると、簡単には引き下がらないつもりなのが分かる。」


生徒会のもう一人のメンバーである、巻き髪のゆるい雰囲気を持つ少女が笑いをこらえきれずに口を開いた。

「いや~、これは大変なことになりそうね。アレックス、もう気づいた?大きな厄介事に巻き込まれたんだって。」


葵は彼女に鋭い視線を投げた。

「これ以上しゃべると、あなたも婚約契約書にサインさせるわよ、メイ。」


メイは両手を挙げ、降参のポーズを取った。

「分かった、分かった!もう何も言わないわ。でもね、アレックス、今年は絶対に面白くなるわよ。」


春が会話のトーンを変え、場を和ませようと介入した。

「そんなに気負わなくていいよ、アレックス。会長は細かいところまで計画する人だから、きっと良い方向に進むはずだよ。」


葵は春を一瞥し、その助け舟に感謝している様子を見せたが、すぐに再びアレックスに目を向けた。

「とにかく、これが拒否できないことは分かってるわよね。でも、負担にならないようにサポートはちゃんとするから安心して。私たちがすべて教えるから、すぐに慣れるはずよ。」


アレックスは沈黙したまま、言われたことを消化しようとしていた。この状況がどう展開するかは分からないが、ただ背を向けるわけにもいかない気がした。



---


「それで、アレックス。私の人生、家族、そして未来に加わる覚悟はできた?」


アレックスは少しの間考え込み、葵の真剣な表情と、返事を待つ生徒会メンバーの視線を感じた。その沈黙は永遠のように感じられたが、最終的にアレックスは不安を抱えたままうなずいた。

「はい…多分他に選択肢はないんだろうし。」


メイは再び笑みを浮かべ、この緊迫した瞬間を楽しんでいるようだった。

「おーい!これは面白くなりそう。


葵は満足そうに微笑んだが、その微笑みには完全な温かさはなかった。

「よし、これで決まりね。ようこそ、生徒会へ、アレックス。」


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