坂本真理は、自らの推理が少しずつ形になっていくのを感じていた。しかし、心の中で一つの疑問が湧き上がっていた。オクトが反応した光のパターン、そしてそのパターンが過去の実験データと驚くほど一致しているという事実。しかし、オクトはただの水族館の生物ではない。彼にはもっと深い意味があり、その背後には恐ろしい計画が隠されているように思えてならなかった。
坂本は、所長とともに再度、現場での調査を進めることにした。警察の捜査と並行して、坂本はできる限りの証拠を集め、犯人がどのようにしてオクトを操作したのか、その方法を解明しようと試みていた。
坂本はまず、水槽の近くに設置されていた照明システムを再度詳細に調べ始めた。照明の配線や機器の状態は一見何も問題がないように見えたが、照明の操作方法に関して異常が発覚する。それは、照明システムが通常の手順では操作できない特殊な設定をされていたことだった。
「これ、誰かが設定を変更した形跡がある…」
坂本は驚きとともにその事実を確認した。このシステムには、普段の操作方法とは異なる「プログラムモード」が存在しており、そのモードを使うことで、光のパターンを細かく調整できるようになっていた。それだけでなく、その設定にはパスコードが必要であり、そのパスコードがなければ設定変更ができない仕組みになっていた。
坂本はそのパスコードを追跡することを決意し、研究所のIT部門と協力してログイン情報を確認した。その結果、驚くべき事実が明らかになった。パスコードを入力した人物は、現場に残された痕跡と照合すると、警備担当者であることが判明したのだ。
「警備担当者が…そんなことを…?」
坂本はこの事実に衝撃を受けた。警備担当者がなぜ、誰かと共謀して、オクトの脱走を助けるような行動をとったのか。その理由がわからないままでは事件は解決できない。
坂本はその人物を追跡するため、警察に通報し、犯人が持つかもしれない証拠を確保する手立てを講じることにした。同時に、オクトの脱走を助けた者が、どのようにしてオクトに光のパターンを学ばせたのかという点も、引き続き調査を進める必要があった。
再び現れるタコの行動
その夜、坂本が研究室で資料を整理していたとき、予期せぬ出来事が起きる。研究所内の監視カメラが、ある異常な映像を捉えていた。それは、オクトが再び水槽の中を移動しているシーンだった。これまでのオクトの動きとは明らかに異なり、今度は意図的に水槽の端に向かって進んでいくように見えた。
坂本はその映像を再生し、驚くべき事実に気づく。それは、オクトが以前に反応した光のパターンを再現しようとしているかのような動きだった。そして、そのパターンは、明らかに人為的に調整された光のパターンであることが分かった。
「もしかしたら、オクトが光のパターンに従って、再び何かを発信しようとしているのかもしれない…」
坂本は急いで警察に連絡を取り、オクトの行動に何らかの意味があることを伝えた。警察の鑑識が再度現場を調査し、オクトの動きに関連する新たな証拠を見つけ出した。それは、オクトの水槽の周辺に残されていた、微細な金属片と共に消えた痕跡だった。
坂本は確信した。これが、犯人がオクトを操作するために使った秘密の道具であり、光のパターンを操るために必要な装置だった。
「これで全て繋がった。」
坂本は、オクトの行動が犯人の意図を明確に示していることに気づいた。オクトは無意識のうちに、犯人の命令を実行し、研究データを盗み出すために脱走したのだ。しかし、犯人の真の目的はそれだけではなかった。坂本の頭の中で、事件の全貌が少しずつ明らかになっていく。
新たな証拠と決定的な一歩
坂本は、警察と共に犯人が最後に隠した証拠を見つけるべく、捜索を続けた。オクトの行動を観察し、その周辺の証拠を整理していく中で、遂に事件の真相にたどり着く。その瞬間、坂本は目を見開いた。
犯人は、オクトを利用して研究データを盗むつもりだったのだ。だが、その計画が崩れたのは、オクト自身が予測し、計画を裏切ったからだ。オクトの反応はただの偶然ではなく、まるで計算された行動のように思えてきた。