翔が江戸時代から去って数百年後――。

現代の石川県。ある食品研究者が郷土史を調査していた。古文書には、「氷室の氷を用いた奇抜な寿司職人」の記録があり、彼が江戸の食文化を大きく変えたことが記されていた。

「この職人の名……翔？」

研究者は驚いた。その名は、彼が幼少期に祖父から聞いた伝説の人物と同じだった。翔は寿司の鮮度を革新し、氷を利用した保存技術を広めた。その名残は現代の冷却技術の発展に繋がっていたのだ。

特に、翔が考案した「氷牙（ひょうが）」の概念は、現代の氷菓子のルーツのひとつとされ、氷温熟成の発想が食品加工技術の基礎となっていた。彼が作った技術は、非効率なものではなく、むしろ冷凍技術の進化の礎となっていたのだ。

また、翔が開いた寿司屋の流れを汲む老舗では、伝統的な「氷締め寿司」が今も提供されていた。その技法は最新の冷却技術と融合し、究極の鮮度を誇る寿司として進化を遂げていた。

さらに、石川県の山奥には氷室跡が残り、こんな言い伝えが伝わっていた。

「かつて未来から来た男が氷室の奇跡を使い、江戸の食文化を変えた」

翔の足跡は、技術の発展という形で未来に刻まれていたのだった。