目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

31 王ラスキンと神の御使い_11

   *          *


「それでは、本日の本題に入ろうかね、ハルコン殿!」


「はい。お伺いいたします、陛下」


 これまでとは、若干雰囲気を改められて、お話になる陛下。ハルコンは、少しだけ身を乗り出して、お話をじっと聞く。


「キミも知っていると思うが、コリンドの姫君ステラ嬢を、我が国に正式に留学生として受け容れることが決まった」


「……」


「まだ彼女は11歳と幼いため、王立学校の初等部に入学となる。いいかね?」


「はい」


「その際、キミやミラ・シルウィット嬢も娘のシルファー同様、年齢の近い者同士、ステラ・コリンド第三皇女殿下の学友として接して欲しいのだ。頼めるかね?」


 じっと、……こちらの目の色を見つめてこられるラスキン陛下。


「はい。ワカりました」


「おぉっ、そうかそうか、……」


 こちらがニコッと笑顔を作ると、陛下もホッとされたように表情を崩された。

 今後コリンドの姫君のご学友として、日々接することが決まったのだが、……。


 陛下や宰相、父上らが推し進めている新たなる外交政策、……「善隣外交」。


 これからは隣国と協力して、仙薬エリクサーを「核」とした技術向上を図り、産業を発展させて経済を活性化させる。

 軍事に頼ることなく「富国」を成し遂げるための、極めて大事な政策だ。


 その一環として、近隣各国から留学生を大々的に受け容れることになっている。


 そして、コリンド国とファイルド国は永らく戦争状態にあったため、ぜひステラ殿下の留学を成功させたい。


 ラスキン陛下は気さくな表情をされていらっしゃるが、万全を期したいご様子だ。

 だからこそ、そのための私なのだろう、……とハルコンは思った。


「ハルコン殿、何かあれば、いつでも王宮に提案して欲しい。よろしいかね?」


「はい。しかと承りました!」


 ハルコンは、それからしばらくの間、陛下から隣国コリンドとの関係について説明を受けた。


「……、以上だ。ハルコン殿、キミはどうお考えになる? 率直に話してくれないだろうか?」


 じっと見つめる瞳。とても迫力が感じられた。

 ハルコンは、「それでは、……」といって、更に以下のように提案した。


「ファイルド国の技術や商品を、これまで以上にロスシルド領を経由して流入させることで、コリンド国内の生活の質が向上されるものと思われます。その後、再度和平交渉を行えば、向こうも態度を軟化させてくるのではありませんか?」と。


 その案を告げるハルコンに、王ラスキンは「それでいこう!」と仰って、強く同意された。


 狭い室内には、王とハルコンの2人の他、誰もいない。

 すると、……陛下がこちらまでじりじりとにじり寄って、抱き付いてこられた。


「もう戦争はウンザリだ! 我は、平和の王でありたい。『神の御使い』ハルコン殿、……我が願いを、女神様にお伝え頂けないか?」


 王はしがみ付きながら、ハルコンに強い調子でそう訴えてこられた。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?