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さて、……。両国の宮殿は、これからどう対応するのかな?
ハルコンは今、貴族寮の研究室兼居室にいて、個人的に作業を進めている最中だ。
この一年、仙薬エリクサーについては、王立の研究院にて行っているのだが、……。
でも、身の回りの細々とした個人的な研究については、相変わらずこの寮の研究室で続けているのだ。
ハルコンは作業をしながら、同時にふたつの王宮と皇宮にいるNPCの視点を借りて、向こうの様子を探っていた。
そろそろかなぁと思っていると、……ドアを3回ノックする音がする。
「はぁ~い、どなたですかぁ?」
「私(寮長)です。中に入ってもよろしいですか?」
ちょうどいいタイミングだと、ハルコンは思った。
「はい。お入り下さい、寮長」
ハルコンは、さっそく中に迎え入れるために入り口まで向かった。
「失礼します」
寮長が敬語なのは、ハルコンが今では王立研究院の所長を務め、数々の成功により子爵にまで昇格しているためだ。
寮長もまだ学生の身分ではあるが、同時に王宮に勤める役人でもある。その辺りは、臨機応変で割り切っているのだろう。
「今日はどうされましたか?」
「隣国の姫君の、王立学校への留学が正式に決まりました。陛下からお話があるため、王宮にきて欲しいとのことです」
「了解しました。直ぐに身支度を整えて参内します」
ハルコンは作業を中断すると、サッと片付け、直ぐに正装に着替え始める。
最近では、急な呼び出しに対応するため、常時正装が手に届く場所にぶら下げてある。
ハルコンは寮長を待たせながら数分で準備を済ませると、貴族寮の前の車止めに停めてある馬車に共に乗り込んだ。
車内で、今回の呼び出しについて、寮長から軽いブリーフィングを受けるハルコン。
それから30分後。様々な手続きを経て、王宮の奥深く、いつものプライベートルームに招かれた。
本日はラスキン国王陛下、お一人で部屋にいらっしゃった。
こちらも途中までは寮長が一緒だったものの、部屋に入室する際には、ハルコン一人だけになった。
いつもは他に宰相やシルファー先輩、寮長や父カイルズが同席するのだが、本日は国王陛下と自分のみ。
どうやら2人だけの、……個人的な会談になるようだ。