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31 王ラスキンと神の御使い_03

   *          *


「おぉっ、『神の御使い』殿、こられたか!」


 新緑の萌える初夏の夕方、王宮のいつもの20畳程のプライベートルームに、ハルコンは通される。

 そして今回もまた、王ラスキンと宰相はとても待ちかねたご様子だ。


「へ、陛下、……その『神の御使い』殿は、何だかこそばゆいです。私はまだまだ子供ですし、爵位も子爵になったばかりですから、特別扱いはご無用ですよ!」


「おぉっ、そうか、そうか、ワハハハハッ……」


 ラスキン国王陛下はそう仰って、宰相と共にお笑いになられた。


 ハルコンは、仙薬エリクサー、通称「ハルコン」の販路拡大の褒美として、先月子爵の位を授かった。

 嬉しいことに、ここ最近「ハルコンタイプB」の販売網に新たに数ヶ国が加わり、現在大増産体制に入っているのだ。


 とりあえず、聖地にあった「回生の木」を、研究所の敷地に隣接する広大な樹木畑に移植したことで、増産に何とか間に合っている状況だ。


 だが、……このままでは直ぐにまた足りなくなってしまうだろうと、新たな候補地を探しているところだ。


「ハルコンのおかげで、ファイルド国の国庫は非常に潤っておるところだ。誠に以て、感謝の言葉しか思い浮かばないな!」


 そう仰って、笑顔になられる陛下と宰相。


 あれ? 今日の招集って、何でこちらのお二方だけなんだろう?

 いつもなら必ずシルファー先輩も同席されているのに、今回は何故かいらっしゃらない。


「陛下、本日はどうされましたか?」


 ハルコンは、率直に陛下にお訊ねした。


「実はな、ハルコン。隣国コリンドから王宮に対し、ひとつ要請があったのだ!」


「それは、どういったことでしょうか?」


「両国の友好のためにも、コリンドの第三皇女殿下を、ぜひ王立学校への留学を認めて欲しいとな!」


「留学、……ですか?」


 すると、陛下と宰相はお互いの顔を見て頷き合うと、上半身を前に乗り出してこられ、こう仰った。


「あぁ。おそらくハルコン、……オマエ目当てだろうな」


「……」


「なぁ、ハルコン。我が娘シルファーは、親の目から見てもかなりいい女だ。だが、あれはあれで、なかなか嫉妬深い性格の持ち主なのだ!」


「は、はぁ、……」


「なぁ、……オマエなら、我の言いたいことくらい、よぉ~くワカるよな?」


 こちらを探るような目つきで、笑顔でお訊ねになられる陛下。

 ハルコンは、「さて、どうやってこの場を切り抜けようかなぁ?」と思考を巡らせた。

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