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「ねぇ~っ、ハルコン。この玉を筒に入れていけばいいんだよね?」
「うん。発射筒の設置は私がやるから、ミラは玉の配置をお願いね!」
「了解!」
ミラはハルコンの指示の下、用意した球体を設置した各筒に次々と投入していく。
今回、2人が取り扱っている球体は、いわゆる花火玉だ。
サイズは3号玉。直径9センチで、想定打ち上げ高度は地球のモジュール換算で120メートルだ。
先日の実験では、120メートルの高度で、直径60メートルの開花に成功している。
王都の住民の大半が寝静まる真夜中に、ハルコンとミラはこっそりと花火の打ち上げを行っていたのだ。
夜空に開花する花火を見て、ミラは「凄い、凄い、凄いっ!!」と大いに感激して、大興奮状態だった。
おそらく、今夜の花火大会でも参加者達は同様に大騒ぎするのではないかなぁと、ハルコンは作業をしながら思った。
「ふふっ、これで、皆の度肝を抜いて見せようかな?」
「ハルコン、ふふっ、……ちょっと悪い顔してるよ!」
お互いにクスクスと笑いを堪えながら、長年のコンビ故に、手際よく花火玉を各筒に準備していく。
今回、ハルコンとミラは、事前に30個の花火玉を作って用意していた。
まぁ、これが前世の晴子のいた現代日本なら、まさに法律違反となる。
少なくとも、「煙火打揚従事者手帳」と「火薬類取扱保安責任者」というふたつの資格が必要で、向こうの世界では、どうしてもプロにお願いすることになる。
でも、ここは異世界なんだ。
そもそも「火薬」というモノ自体、これまで存在しない世界だったのだから、前世の知識と素養のあるハルコンがそれらの作業を行っても、何らお咎めないのだ。
「ハルコン、……準備完了だよ!」
「OK! ありがとう。点火はミラに任せるよ!」
「やたっ! 嬉しいっ!」
すかさず喜ぶミラ。
どうやら先日の実験で、打ち上げ花火の美しさに魅入られてしまったミラは、この花火を取り扱うという作業そのものに、大いに興味を示していた。
仮に、……もしかしたらさ。
近い将来、「花火師」という職業がこちらの世界でも始まったら、その第一号がミラになったりするのかなぁと、ハルコンは思った。
ふと気が付くと、会場の学生達の多くが、こちらの様子を窺っていた。
本日最大のサプライズを、2人だけでこっそり準備していたつもりだったが、勘のいい参加者達がこちらの作業に気付いたのかもしれないね。
そんな具合に多くの視線が注がれる中、ミラは得意そうに導火線に点火する。
ホンの数秒後、小さな導火線の炎が設置した筒に到達するや否や、「シュポッ!」という音と共に、花火玉が上空120メートルまで飛翔する。
その直後、「ドーン!」と、心臓に響くような重低音を打ち鳴らした。
会場にいる参加者全員が口を開けて夜空を見上げる中、次々と大輪の花が咲き乱れていった。