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「ねぇーっ、ハルコン。冒険者ギルドに何の用なの?」
「うん。ちょっと、情報収集かなぁ」
「情報収集?」
ハルコンとミラは、週の半ば頃、放課後に兄達のサークル活動が休みの日を狙って、王都の中心地にある冒険者ギルドに顔を出していた。
昼間のギルドは、まだ誰も王都の森周辺で狩った魔物を搬入する時間ではないようで、利用者もまばらだった。
そこに、まだ若干7歳の小柄な少年と少女がひょっこり現れたものだから、受付のお姉さんは、「あらあら、仕方ないわねぇ」といった表情で、席を立ってこちらにやってきた。
「ねぇ、キミ達。ここは子供のくるような場所ではないのよ! トラブルに巻き込まれたくなかったら、早いとこ出ていった方がいいわよ!」
そう言って、ハルコンとミラ2人の目線に合わせて、しゃがみながらニコリと笑った。
「へぇーっ。エルフのお姉さんだ!」
ミラは田舎者なので、あまりエルフを見たことがない。目を輝かせて、受付のお姉さんを見つめていた。
「こらこら、そんな反応しないの。王都では、そんなに珍しくないわよ!」
受付嬢は、ニッコリと微笑んだ。
「すみません。私達、王都の森について調べたいことがあったので、こちらに伺ったのですが、……」
「うぅん? ここは、ギルドに登録していない人は、紹介状がないと受付しないのよ。あなた、そういうの持ってるのかしら?」
「はい、こちらですね」
そう言って、ハルコンは受付嬢に紹介状を手渡した。
「ンッ、フゥーッンン!!??」
彼女は、その紹介状にファイルド王家の紋章が施されているのを見て、思わずギクリとした。
「あなた、……その制服は、王立学校の生徒さんよね? 今更ですけど、お名前を伺ってもよろしいかしら?」
「はいっ。ハルコン・セイントークですっ!」
「ンッ、フゥーッンン!!??」
その名前は、先日シルファー第二王女殿下の名の下に、突然王都内の官民の公的機関全てに対し、号令が出されていた。
『ハルコン・セイントーク並びにミラ・シルウィット、両名の王都の森への外出許可を、ここに認めるものとする!』というもの。
要するに、ハルコンとミラは、今や王家の認めたVIPなのだ。
「よっ、よよっ、ようこそ、お出で下さいましたっ! これより資料室にて担当の者がご説明いたしますので、どうぞこちらまでお越し下さいっ!」
エルフの受付嬢は、汗だくだくで奥の部屋までの案内を申し出た。
「じゃっ、いこうか?」
「う、うんっ」
ハルコンとミラも、そのまま廊下を渡って、奥の部屋に付いてゆく。