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22 仙薬エリクサーにまつわる話_05

   *          *


「いやぁ~っ、シルファー先輩、なかなか大変だったねぇ、……ハルコン!」


「うん? まぁ、あんなもんでしょ? 交渉事なんて、……」


 ミラの言葉に、ハルコンは事もなげな様子で、……実にあっさりとしたもんだ。


 シルファー先輩が部屋を去っていくと、さっそく今度の週末の、王都の森への外出に備えて、ハルコンはこれから持っていくものを物色していた。


「ねぇ、ハルコン、……」


 しばらくの間、ミラはそんなハルコンの様子をじっと見ていたのだが、おもむろに声をかけてきた。


「うん? なぁ~にぃ?」


 すると、ハルコンは笑顔のまま、相変わらず木箱の中の器材を物色している。


「ハルコンってさ、……もしかして、前にどこかで、エリクサーを作ってたりしたとか?」


 そう話しながら、途中で「そんなワケないだろう」と思ったのか、ミラの声はどこか消え入りそうだ。


「うぅ~ん? ミラはどうして、そう思ったのかな?」


「ふふっ、何となくかなぁ~、何てさ!」


「……」


 ハルコンが黙っていると、ミラは段々居た堪れない気持ちになってきたようだ。


「あっ、あのっ!」


「そうだよ、ミラ、……」


 ミラの言葉に、ハルコンは被せ気味に言葉を強く発した。


「ハッ、ハルコン。私はいいから、続けて!」


「うん、……私は、以前にもエリクサーを作っていてね。その時の記憶を頼りに、器材をドワーフの親方に作って貰ったり、研究サンプルを探してきたりして、実は当時の研究環境を再現しているんだよね、……」


「当時の研究環境? それって、……?」


 すると、突然個室のドアがノックされた。


「ミラ、ごめんね。話はまた今度!」


「う、うん、……」


「はぁ~い、どちら様ですかぁ~?」


「私よ、サリナよ。早く開けてちょうだい!」


「はぁ~い」


「ハルコン、新作のボードゲームを作ったんですって? さっそく私にもやらせなさいっ! 楽しかったら、サークルの皆に言って、また宣伝してあげるからっ!」


「耳が早いですねぇ~っ、サリナ姉さん。ならさっそく、こちらで始めますか?」


「うん、やるやるっ! ほら、ミラちゃんも一緒にやりましょ?」


「……、はい」


 そんな具合に、ハルコンとミラの話は、一度曖昧に終わった。

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