* *
「いやぁ~っ、シルファー先輩、なかなか大変だったねぇ、……ハルコン!」
「うん? まぁ、あんなもんでしょ? 交渉事なんて、……」
ミラの言葉に、ハルコンは事もなげな様子で、……実にあっさりとしたもんだ。
シルファー先輩が部屋を去っていくと、さっそく今度の週末の、王都の森への外出に備えて、ハルコンはこれから持っていくものを物色していた。
「ねぇ、ハルコン、……」
しばらくの間、ミラはそんなハルコンの様子をじっと見ていたのだが、おもむろに声をかけてきた。
「うん? なぁ~にぃ?」
すると、ハルコンは笑顔のまま、相変わらず木箱の中の器材を物色している。
「ハルコンってさ、……もしかして、前にどこかで、エリクサーを作ってたりしたとか?」
そう話しながら、途中で「そんなワケないだろう」と思ったのか、ミラの声はどこか消え入りそうだ。
「うぅ~ん? ミラはどうして、そう思ったのかな?」
「ふふっ、何となくかなぁ~、何てさ!」
「……」
ハルコンが黙っていると、ミラは段々居た堪れない気持ちになってきたようだ。
「あっ、あのっ!」
「そうだよ、ミラ、……」
ミラの言葉に、ハルコンは被せ気味に言葉を強く発した。
「ハッ、ハルコン。私はいいから、続けて!」
「うん、……私は、以前にもエリクサーを作っていてね。その時の記憶を頼りに、器材をドワーフの親方に作って貰ったり、研究サンプルを探してきたりして、実は当時の研究環境を再現しているんだよね、……」
「当時の研究環境? それって、……?」
すると、突然個室のドアがノックされた。
「ミラ、ごめんね。話はまた今度!」
「う、うん、……」
「はぁ~い、どちら様ですかぁ~?」
「私よ、サリナよ。早く開けてちょうだい!」
「はぁ~い」
「ハルコン、新作のボードゲームを作ったんですって? さっそく私にもやらせなさいっ! 楽しかったら、サークルの皆に言って、また宣伝してあげるからっ!」
「耳が早いですねぇ~っ、サリナ姉さん。ならさっそく、こちらで始めますか?」
「うん、やるやるっ! ほら、ミラちゃんも一緒にやりましょ?」
「……、はい」
そんな具合に、ハルコンとミラの話は、一度曖昧に終わった。