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22 仙薬エリクサーにまつわる話_04

   *          *


「シルファー先輩、……これは、商売の時間ですね?」


 ハルコンも不敵に微笑んだ。


「フフフフフッ! ハルコン・セイントーク。お主も悪よのう!」


「フフフフフッ! シルファー先輩もなかなか、したたかでございますな!」


「「ウフフフフフフッ、……」」


 お互いに悪い笑顔を浮かべて見つめ合っていると、「ンッ、ウゥーン」とミラがひとつ咳払いをした。


 シルファー先輩が、「あら、何かしら?」といった顔でミラのことを見ると、ミラはおもむろに肩掛け鞄からマッチの箱を取り出した。


「先輩、もうこれ、……商品化されてるんですよっ! 私達が王都にくる前にはシルウィット領にも届いていましたから。王都でも、そろそろ出回るのではないかと、……」


 それを聞いたシルファー先輩は、わなわなと震え出した。


「もぉ~うっ、ハルコンったらぁーっ!!」


 そう言って、ハルコンの肩をポコポコと叩いてくる。

 それを笑顔で受け容れるハルコン。


「ちなみに、……お値段は、どの位なのかしら?」


「一箱、銅貨3枚(日本円で300円位)で販売する予定ですよ!」


「やっ、安過ぎませんか? いくら何でもっ!」


 シルファー先輩は、いささか心配するような表情を浮かべた。


「まぁ、薄利多売ですしね。貧しい家庭でも便利な生活を送れたら、それでよろしいではありませんか!」


 その言葉に、先輩は全くそのとおりだと思われたのか、無言でこくりと頷かれた。


「殊勝なお考えですわね。私、とても感心いたしましたわ!」


「そう仰って頂けると、とても幸いです」


 それからハルコンは部屋の奥に積んである木箱を開けて、中身を取り出した。


「とりあえず、王宮でもお使いになられたら如何ですか? こちらは宣伝を兼ねて、先輩にお譲りいたします」


 そう言って、3ダース程のセットのマッチを、手提げ袋に入れてお渡しした。


「まぁ、……いいでしょう。つまり、これで王都の森への単身での外出許可を認めろ、……そう仰っているのですね?」


「……」


 ハルコンは、無言で笑顔を向けている。シルファー先輩は大きなため息を吐いて、こちらをじっと見た。


「いいでしょう。あなた方は、確かキング・オーガも倒したんでしたよね?」


「はいっ!」


「なら、私から王宮の方には、そう報告しておきます。王都の門を守護する衛兵達にも伝達させますから、いつでもお二人で出かけて貰って構いませんよ!」


「「ありがとうございます!」」


 ハルコンとミラは、シルファー先輩にニッコリと微笑んだ。

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