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22 仙薬エリクサーにまつわる話_01

「それじゃぁ、ミラ。女子の寮長さんには、週末の外出許可、ちゃんと貰っておいてね!」


「了解! ハルコン、何か他に私に手伝えることある?」


「少し多めに器材運ぶから、頼めるかな?」


「いいよぉ!」


 ハルコンとミラは、昼休みの王立学校の食堂で、週末の外出計画について話し合っていた。

 学校が休みの日を狙って、王都の城門を出て周囲に広がる森に、たったの2人だけで土壌サンプルを取りにいくつもりなのだ。


「危ないですよ、ハルコン! 王都周辺の森は、結構いろんな魔物が出没するのですからっ!」


 すると、シルファー先輩がどこで聞きつけたのか、慌てて2人の計画を止めに入ってきた。


「平気ですよぉ。東方3領でも、私達は日々森に潜ってましたから!」


 ハルコンがそう言ってニコリとすると、ミラもうんうんと頷いている。


「あなた方は、王都の森を舐め過ぎですっ!」


「えっ!? 王都の近くの森なのに、まだ魔物を狩りきれていないのですか?」


「狩りきれていないんです。むしろ、王都から出る生ゴミに群がって、たくさん出没する位なのですからっ!」


「「なるほど、……」」


 そういえば、前世の晴子の時代、日本の首都東京の23区でも平気で狸も狐もいたし、都下にいけば、猪や猿、小型の熊も出没していたようだ。

 まぁ、十分あり得る話なのかもなぁと、ハルコンは思った。


 ハルコンがちらりとミラを見ると、彼女はキョトンとした顔をして、シルファー先輩の顔を不思議そうに見つめていた。


「ちなみに、どんな魔物が出るのでしょうか?」


 ミラは、率直にシルファー先輩に訊ねていた。


「そうですねぇ。王都周辺は、大人の冒険者達のいい狩場ですから。まぁ、ゴブリンとかコボルト、たまにオークやオーガもいるみたいで、新人にケガ人も出ているそうですよ!」


「なら、平気です。私達、ローグの森でキング・オーガを倒したこともありますので」


 朗らかな笑顔でミラが答えると、シルファー先輩は、一瞬ぶるると背筋を震わせた。


「ち、ちなみに、……そのことを、ローレル(ミラの父親のこと)卿や大人達は知っているのかな?」


「いいえ、伝えていません。だって、……バレたら森に土壌サンプルを取りにいくの、禁止になっちゃいますから!」


 ミラのあっさりした口調に、シルファー先輩は一瞬気色ばんだ表情を浮かべた。


「前にも一度伺ったと思うけど、……確か、森の土壌で薬を作るんでしたっけ?」


「えぇ、そうです。私が生み出そうとしている薬剤は、森の土壌から生み出されます」


「なら、話を詳しく訊かせて貰おうかしら? 場合によっては、外出許可を出せません!」


「そうですねぇ、……ここで話すより、私の研究室で一度見て頂けますか?」


 ハルコンは、森の土壌が何故素晴らしいのか、先輩に研究成果の一端を見て貰おうと思った。

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