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漸く両サークル同士の殴り合いが終わった後、シルファー先輩が槍術の達人として、満を持して試合場に上がってきた。
「「「「「「「「「「ワアアアアァァァーーーッッ!!」」」」」」」」」」
観客達の熱狂的な声援。この国の王族、特にシルファー先輩の日々の行いが、かくも人気の理由なんだろうなぁとハルコンは思った。
「ミラァーッ! そんなとこいないで、こちらに上がってらっしゃい!」
シルファー先輩の声に、観客の視線が一気にミラに向けて注がれた。
「「「「「「ミラァーッ、応援してるぞぉ―っ、頑張れーっ!!」」」」」」
学生達の歓声が鳴り止まぬ中、ミラもゆっくりと試合場に上がった。
これからシルファー先輩とミラ、2人は槍と薙刀を用いて演武を行い、競い合うのだ。
「なら、始めますわよっ、ミラッ!!」
「はいっ!!」
直後、2人の槍と薙刀が、相手の身体の皮一枚すれすれを舐めるようにしならせて通過していくと、観客達は思わずため息にも似た吐息を漏らす。
それでも、2人に動じた気配はない。笑顔のまま、互いの武器を振り回し始めた。
観客達の心配をよそに、2人の演者はまるで楽器を奏でるかのように槍と薙刀を繰り出すと、互いに距離を詰めたり離れたりを繰り返す。
その姿は、まるで阿吽の呼吸で為されるひとつの演劇であり、見る者をただただ魅了するのだ。
美少女2人の目の覚めるような素晴らしい演武に、観客達は息を飲んで見守っている。
凄いな、2人とも! ホンと、びっくりだ!!
まるで天界の天使が地上に舞い降りて、武を演じているみたいだと、ハルコンは思った。
そして、無事シルファー先輩とミラの2人が演じ終えると、場内の意識は最高潮に達した。
「「「「「「「「「「ワアアアアァァァーーーッッ!!」」」」」」」」」」
割れんばかりの歓声の中、シルファー先輩とミラは、溌溂とした笑顔で観客達に手を振りながら試合場を後にした。
「キャーッ、上手くいきましたね、私達っ!」
「はいっ!」
シルファー先輩とミラが、互いに相手の両手を握り合って喜びを噛み締めている。
ハルコンは、今日の主役はこの2人で決まりだなぁと心から思った。
結局、今回の武闘大会、……場内混乱につき、優勝者なし。演武の金賞を、シルファー先輩とミラが受賞するという結果に終わった。
最有力候補であったイメルダのサークルは、この大会でまるで良いところがなく、その陣営は非常に苦渋に満ちた表情を浮かべていた。
「何でこんな結果になったか、あなた達ワカってらっしゃるの!?」
イメルダはその美貌を醜く歪め、精一杯戦ったサークルのメンバー達を怒鳴りつけている。
でも、メンバー達は皆体力を削ぎ落されてしまっている状態なので、反論する気力すら残っていないようだ。
もう、精も根も尽きてしまった状態で、誠にお気の毒ですなぁとハルコンはニコリと笑った。
「ふふっ、ハルコン、とても悪い顔をしてらっしゃるわよ!」
シルファー先輩が、これまた意地悪そうにニヤリと笑った。ミラを見ると、そんな顔しちゃ相手に失礼だよぉと言った表情で慌てている。
ミラは、相変わらずいい子だなぁと、ハルコンは思った。
一方、セイントーク兄達やサークルのメンバー達は意気揚々、これからはもっともっとトレーニングに励むぞっと意気込んでいた。