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「ふふふっ、ハルコンが凄い悪い顔をしてるっ!」
ミラがクスクスと笑った。
「何を言っているんだい、ミラ! 策士と言ってくれたまえ、策士と! エッヘン!」
「ふふふっ、やっぱりいつものハルコンかもっ!」
そう言って、ミラが笑顔でこちらの背中をポンと叩いてきた。
まぁ、……こうも言えるのだけれどね。
「防御が上手い者は、総じて攻撃も上手である」と。
とにかく、相手の手のウチをじっくりと拝んでから、慌てず冷静にクリーンヒット。ただそれをひたすら繰り返すのだ。
「ハルコンってさ、一級剣士の先生が私に教えてくれたことと、大体指導方針が似ていたと思う!」
「そうなの?」
「うんっ!」
ミラは感心したのか、うんうんと笑顔で頷いている。
「「「「「「「「「「「ハルコン、ハルコン、ハルコン、ハルコン、ハルコン、……」」」」」」」」」」」
「「「いいぞぉーっ、ハルコンッ! もっとやれぇーっ!!」」」
すると、今サークルメンバーが試合をしているのにも拘らず、観客達がハルコンの名前を一斉に叫び始めた。
どうやら、今回の立役者であるハルコンに、俄然注目が集まってきた様子。
ミラにとっても、ハルコンが注目されるのは嬉しかったようなのだが、……。
「「「「「きゃ~っ、ハルコン素敵ぃーっ!」」」」」
サリナ姉のサークルの女の子達が、サリナ姉と一緒になってハルコンのことを応援し出すと、ミラはヤキモキさせられてしまったのか、少しむくれた表情を浮かべ始めた。
「まぁまぁ、ミラさんや」
「ふんっ、ハルコンのことなんて知らない!」
「今回、兄達を手伝ってくれて、ありがとうね!」
そう言って最初そっぽを向くミラだったのだが、ハルコンからのお礼の言葉を聞くと、ニカッと笑い返してきた。
「ううん、ハルコンのことなら、私何でも頑張るからっ!」
「ありがとう」
ハルコンもミラも、お互いにニッコリと笑った。
さて、……その次の試合が、ミラとノーマン・ロスシルドとの対戦だ。
ミラは先程から笑顔で余裕のある雰囲気なのだが、一方のノーマンは目を滾らせて、向こうの対戦席からジィッと睨んでいた。
「ミラ、……次の試合、イケる?」
「うん、全く問題なし!」
ホンと、今回の件でとても逞しくなったなぁ、……ミラ。
どうやら、ミラに不安要素は全くないようだと、ハルコンは心強く思った。