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「イィヤァァァーーーッッ!!」
「参ったぁーっ! 降参だっ、もう勘弁してくれーっ!!」
「「「「「「「「「「ウオオオォォォーーーッッ!!」」」」」」」」」」
待ちに待った武闘大会が、……ついに火ぶたを切るように始まった。
すると、観客の学生達は、大方の予想を超える事態をまざまざと見ることになる。
何しろ弱小連合と揶揄されたセイントーク兄弟のサークルメンバー達が、次々と優勝候補を倒していくのだから。
あの普段オドオドして弱っちぃヤツらが、まさか一矢報いるどころか勝ってしまうなんてっ!
あぁっ、見ていてこちらまで勇気が湧いてくるっ!
もうアイツらのことバカにしないっ! これからアイツらのこと、一推しだっ!
もう観客達のボルテージは、上がりまくり!
大会会場は、セイントーク兄弟の主催するサークルメンバーを称える声一色に染まっていった。
サークルメンバー達は、自分達が主役として扱われることに、当初戸惑いを見せていたようだけど、……。
でも、試合会場に群衆が雪崩れ込んできて、メンバー達の背中をバンバンと叩くものだから、やっと実感が沸いてきたようだね、とハルコンはニヤリと笑った。
「ウオオオォォォーーーッッ! 私達は優勝するぞぉーっ!!」
「「「「「「「「「「ウオオオォォォーーーッッ!!」」」」」」」」」」
ハルコンの雄叫びに、メンバーも群衆も一緒になって、拳を天に向けて突き上げた。
そもそも、兄達のサークルメンバーだけでなく、一般の学生達は皆、イメルダのサークルが怖かった。
傲慢なイメルダ達に不満があっても、表立って苦言を呈することすらできず、日々悶々と過ごす生徒達が多かった。
一方で、イメルダ達に反旗を翻すまではいかなくとも、一線を画している弱者連合。
でも、多くの学生達はイメルダ達が怖くて、とても弱者連合に肩入れする勇気が持てずにいた。
一応、学生達の不満のはけ口として、シルファー先輩が尽力してくれたそうだが、……。
あいにく、彼女は王族特権を振りかざす人物ではないため、何か揉め事があっても完全な解決には至らなかった。
学内に、そんな諦めムードが漂っている中、忽然とセイントーク兄弟の末弟が入学してきた。
噂では、セイントーク産の様々な商品や料理、サービスを世に齎したといわれる、ハルコン・セイントーク。
学生達は、今や弱者連合ではなくなったマルコム達のサークルの中心に、ハルコンを見た。
へへへっ。思った以上に上手くいったみたい。ハルコンは、内心ほくそ笑む。
それもそのはず、……サークルメンバー達に防御力重視のトレーニングを励ませ、非常に体力豊富な戦士達に仕立て上げてしまったからだ。
とにかく相手の攻撃をひたすら受け流してやり過ごし、相手が攻め疲れたところを狙ってじっくりと反撃させる。
そんな兵法の基本中の基本を、ハルコンはメンバー全てに実践させたのだ。
まぁそんなことをやられてしまったら、相手は直ぐに気力を挫かれて根負けしてしまうに決まっている。
地味だけど、非常に効果的かつクレバーなやり方かな。
何しろ、手ぐすね引いて、相手の体力を確実に削いでゆけるのだから。
ふふっ、メンバーだけでなく、兄達もミラも順当に勝ち進んでいるね。
さて、……イメルダ達は、次にどう対応してくるのかな?
全く見ものだなぁと、……ハルコンは思わずクスクスと笑った。