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21 派閥と武闘大会_02

   *          *


 兄達のサークルの参加者達は、これまでイメルダ達にやられてきた鬱憤を晴らすべく、真剣にトレーニングに励んでいた。


 トレーニングは大いに盛り上がっていて、観客達からも歓声が上がることもしばしば。

 ハルコンの目に、……もう「弱者」はどこにも存在しなかった。


 すると、大会まで10日と迫った頃、ノーマン・ロスシルドがミラにこう警告してきたのだという。


「オマエもウチの派閥に入らないと、必ず後悔するぞ!」と。


「そんなの知りませんよ。私はもう、あなたのフィアンセでも何でもないんですから。だから、もうこれ以上私に構うのはお止め下さいまし!」


 ミラはそう言って、きっぱりお断りしたそうだ。


 ハルコンはその話を聞いて、直ぐにイメルダのサークルの敵情視察をしようと思った。

 さっそく、イメルダらの周辺にNPCがいるのか探りを入れてみたのだが、……あいにくそんな者はいなかった。


 あれ? もしかして、女神様は子供のNPCをお作りにはならなかったのかな?


 不思議に思ったものの、いないのなら仕方がない。下手な手を打って相手を利することだけは避けたいので、ここは自軍の戦力アップ及び広報に活路を見出すべきかなぁと思った。


 大会の3日前。兄達のサークルルームに、シルファー先輩が今日も訪れていた。

 先輩はサークルに活力を与える一方で、周囲の学生達にもサークルが生まれ変わったことを伝えて回ってくれる、大変貴重な存在だ。


 先輩の周囲のみならず、サークルの室内は活気に満ち溢れ、多くのメンバー達が出入りして笑い声も絶えない。

 シルファー先輩はミラや兄達と一緒に優雅に紅茶を飲んでいて、もう彼女も常連さんだ。


 ハルコンもその席に着いて自分で紅茶を注いでいると、先輩がするりと身を寄せてきた。


「ハルコン、……あまり大きな声では申せませんが、ロスシルド家の者は、総じて能力の高い嫌なヤツですわね。これまで何度も他の学生達との『仲介』をしてきたのですが、もうホンと、厄介で、厄介で」


 彼女の耳打ちは、なかなか辛らつなものだった。あまり、本音を語っていい立場ではないのにも拘わらず、最近は結構際どいことも告げてくる。


 シルファー先輩を始め、王家の子弟子女も数名、王立学校に在籍しているも、基本民事不介入が原則だ。

 まぁ、原則があるのなら例外もある。どうやら、その辺りの個人的なご相談のようだ。


 先程先輩の耳打ちした「仲介」がどのレベルなのかはワカらないが、相当面倒を強いられたのだろう。


 シルファー先輩は、表立ってどちらか一方に肩入れすることもできずにいた時の、私とミラの入学。これを利用する手はないとお考えになられたのかもなぁ。


 とにかく、相当フラストレーションを溜められていたのだろうと、ハルコンは思った。

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