まぁ、……最初はこんなもんかな。
ハルコンは兄達や他のサークルのメンバー達のへばり具合を見て、そう判断した。
「ねぇ、ミラ。キミを巻き込んでしまって申しワケないんだけどさ、……私は大会が終わるまで、兄さん達のサークルを手伝うつもりなんだ!」
「ハルコン、……」
「ミラはどうする? サリナ姉さんのところにいって貰っても構わないんだけど」
「私は、……そうだねぇ。とりあえず、ハルコンのお手伝いをするよ」
ミラは、しばし考えた後、ニコリと笑った。
ハルコンとしても、姉のサークルの主導権争いにミラが巻き込まれでもしたらと、ちょっと不安を感じていたところだった。だから、これがベストな選択だろうと思われた。
「ありがとう、ミラ。マルコム、ケイザン、……とりあえず私とミラで、これからセイントーク流合気術のサポートを始めます。もちろん兄さん達にも尽力して貰うことになると思いますが、それで構いませんね?」
「あぁっ。大いに助かる!」
「そうだぞ! すまんな、ハルコン、ミラちゃん!」
「いえいえ。こちらこそよろしくお願いします」
そう言って、兄達とミラがお互いに頭を下げ合っている。
さて、……と。これからやることは山積みだ。
そもそも、サークルのライバルであるイメルダの派閥が、学内ではかなりの大勢力として存在しているという現実。
おそらく、来月半ばの武闘大会では、イメルダの派閥が優勝の最有力候補だろう。
でも、そこは我に必勝の策あり。いくらでも、これから挽回できるよ!
ハルコンとミラは、「弱者連合」と揶揄される兄達のサークルの尻を引っ叩きながら、走り込みと筋トレを継続的に進めた。
「……、ファイト、ファイト、ファイト、ゴー、カモンレッツゴー! ……ワンモアセット、ゴー、ゴー、ゴー、カモンッ!」
この10日程、朝昼夕の3回、毎日定時に「ハルコンズ・ブートキャンプ」を実施した。
最初のウチは、参加者はサークルのメンバー10人程で始めたのだが。でも、シルファー先輩も参加していたら、日を追ってどんどん参加者も増え、観客も増えていった。
参加者達は、自分の身体に躍動感を覚え始め、のめり込んできた様子。
そのタイミングで、ハルコンは秘伝の体術、薙刀術の初心者向けバージョンを伝授し始めた。
さっそく乱取りを始めてみると、体のキレが見違えている。
その評判は、瞬く間に広がり、大会まで数日のところで、サークル参加者が50人を越える快挙をなした。