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「いいだろう。ハルコン、さっそく頼むよ!」
「了解です、マルコム! できれば早急に裏のグラウンドにメンバーを集めて下さい。メニューは先ずは初心者コースから! 根詰めていきますよぉ!」
「アレかっ? 滝汗の5分コースか?」
ケイザンが、少し興奮気味に訊ねてきた。
「そうですっ! 一度やったらクセになる、……アレですっ!!」
「「よしっ。皆準備してくれっ!」」
マルコムとケイザンが声を揃えて叫んだ。
優秀なハルコンとミラが加わったことで、兄達は俄然張り切り出した。
「「「「「「おおおぉぉぉ~~~っっっ!!」」」」」」
サークルの先輩達は、マルコムとケイザンの目つきが変わったのを見て、自分達もやる気が漲ってきた。
一時間後、裏のグラウンドに兄達のサークルのメンバーが10人弱集まった。
ハルコンとミラは制服の上着を脱いだままの格好だが、兄達や他のメンバー達は、運動用の軽装服に着替えていた。
シルファー先輩も待ち時間にサッと着替えてきて、彼女も軽装服で参加している。
普段「弱者連合」と揶揄されるマルコム達のサークルが、何か始めるらしい。そんな噂が学内に広まって、いつの間にか、そこそこの人数が見物に集まっていた。
ハルコンがちらりとミラを見ると、彼女もグッと頷き返してくる。
よし。ならいっちょ、始めますか!
「ハァイ、私はハルコン隊長だ! ようこそ、ハルコンズ・ブートキャンプへ! 先ずは、最強の5分コース、いくぞっ! さぁ、付いてこいっ!」
「「「「「「「「「「ヤァーッ!」」」」」」」」」」
「さぁっ、ムーブだっ! ヤァッ、レッツゴー!」
「「「「「「「「「「ヤァーッ!」」」」」」」」」」
「ムーブ、ムーブ、ムーブ、ゴー、カモンッ、レッツゴー!」
さて、サークルのメンバーは、皆ノリ気だな。ミラも上々だし、メンバー達もどこまで付いてこれるかな?
「……、カモンッ、レッツゴー! 1、2、3、4、レッツドゥーイット、カモンッ!」
2、3分続けたところで、サークルのメンバー達の息が上がってきた。兄達は必死な表情で何とか喰らい付いているのだが、……まぁ経験者だしな。
意外にも、シルファー先輩は初めてのトレーニングを順調にこなしている。時折、観客達から声援を受けると、笑顔で軽く手を振って返す位、余裕のようだ。
「……、ワークイット、ワークイット、ワークイット、ツーモアステップ、ヤァッ、ヒアウィゴー、カモンッ!」
次第に、サークルのメンバー達から脱落者が出始めた。滝汗でへとへとになりながら、グラウンドにごろりと横になって、息をゼーゼーしている。
ハルコンはちらりとシルファー先輩を見た。すると、彼女はニコリと微笑み返してきた。
さすが、王族。体力も素晴らしいなとハルコンは感心した。
さて、……そろそろ5分。この辺で終わりにしておくか。
「OK!」
ハルコンとミラが揃って深呼吸を始めると、兄達を始め何とか付いてきたメンバーも、ホッとした表情で深呼吸を始めた。
「グッジョブ! 1、2、3、……ビク〇リーッ!」
その言葉を聞いた参加者達は、皆急速にきた疲労に、思わず尻もちを衝く。
「キッツゥーッ、キッツゥーッ! アハハハハッッ!」
シルファー先輩が滝汗を流しながら、満足そうに笑っている。他のメンバー達は、もう死屍累々のように、グラウンドに横たわっていた。
「すまんな、ハルコン。ハァッ、ハァッ、せっかくの居合術のサークルも、ハァッ、ハァッ、練習をサボってしまって、ハァッ、こんな具合だっ!」
マルコムが、何とか横たわるのを堪えて、立ったまま話しかけてきた。
でも、ハルコンとミラは汗ひとつかかず、ケロリとしていた。
「これは、短期集中コース、『スパルタ』でいきますかね?」
「「やっ、止めろぉ~っ!!」」
兄達2人の声が、思わずハモった。