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「とりあえず、私とミラが大会に出場します。ちなみに、ミラも領地で魔物相手に実戦経験豊富ですから、並大抵の者では歯が立たないと思いますよ!」
「「「それは凄いなっ!」」」
ハルコンの話を聞き、サークルの先輩達の多くは、どこか希望の光に魅入られたような表情を浮かべていた。
でも、マルコムとケイザンは、とても心配そうにこちらを見つめている。
「なぁハルコン、ホンといいのか? ボクらが不甲斐ないばかりに、オマエやミラちゃんに迷惑をかけてしまって、……」
「ホンとだ。すまん、ハルコン!」
「いえいえ、マルコム、ケイザン。私もミラもそこらの子供に比べたら、天と地程の差でしょうから」
ハルコンの言葉を聞き、ミラは横で「エッヘン」と胸を張る。
「おい、マルコム、ケイザン。ハルコンばかりに頼って、もし負けちまったらどうするんだ? さすがにマズいだろ?」
この期に及んで、話の腰を折るヤツがまだいることに、ハルコンは内心イラっとした。
「ですから、先輩の皆さんも一緒に私達と闘うんですよっ!」
「でもぉ、……ボクらの大半は王都から出たことがなくて、……戦闘未経験なんだけどぉ」
ピキィ。その言葉を聞いて、思わずハルコンのこめかみに青筋が立つ。
そんな男どもをよそに、ミラとシルファー先輩は女子2人で話を続けていたのだが、どうやら話が決着したようで、……おもむろに手を上げてきた。
「なら、私も参加しましょうか? 槍術には自信がありますよ!」
「シルファー先輩は王族。確か、民事不介入では?」
「えへっ、そうでした」
ハルコンのツッコミに、舌を出して微笑むシルファー先輩。すると、ミラがおずおずと手を上げる。
「なら、私と演武をしませんか? シルファー先輩の槍術がどの程度かワカりませんが、私の薙刀術は、実戦レベルで戦えますよ!」
「あら、いいですね。見せつけて差し上げますわ!」
お互いにニマリと笑い合うミラとシルファー先輩を見て、2人の方が男どもよりずっと男らしいと、ハルコンは少々呆れてしまった。
「マルコム、とりあえず私とミラは参加。後はサークルのメンバーから有志に出て貰うということで」
「いいだろう。ボクとケイザンも及ばずながら参戦する。他のメンバーにも確認しておく!」
「では、最初に基礎訓練を皆で一緒に始めませんか? 基礎体力が付けば、体幹が確実に上がります。俄然やる気が出て、戦闘意欲の湧く者も出てくると思いますよ!」
「ハルコン、……もしかして、アレをやるのか?」
「えぇ、アレです。私とミラは今でも毎日続けておりますから、皆さんもこの際付き合って貰いましょう!」
「「マジかよ~っ! アレ、チョ~キツいんだよなぁ~っ!」」
「そこが、いいんじゃありませんか? ほら、ファイトですよファイトッ!」
「「えぇ~っ、マジかよぉ~っ!」」
「アレって何です? ハルコン、ミラ?」
「「はいっ。ハルコンズ・ブートキャンプですっ!」」
シルファー先輩の問いかけに、ハルコンとミラは揃って白い歯を見せて笑った。