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20 ハルコンとミラ、王立学校に入学する_07

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「まぁ~っ、皆、そんな顔するなって! ボク達なりに上手くやっているんだから、問題ないっ!」


 そう言って、マルコムとケイザンは笑顔を作るのだが、……カラ元気なのかなぁ。何といっても、サークルの先輩達のどんよりとしたその表情。


 シルファー先輩もミラも、何だか居た堪れない表情を浮かべているし。


 しかも、その女子2人が私の制服の袖を摘まんで、「「ねぇ、何とかできないの?」」って、目で訴えてくるんだけど、……ホンと弱ったなぁとハルコンは思った。


 とりあえず、ハルコンはシルファー先輩に、目でこう訊ねてみた。


「先輩なら、陛下からロスシルドの謀反の件、……先刻ご存じではないのですか?」と。


 つまり、イメルダの父ジョルナム・ロスシルド伯爵は、あらんことか敵国コリンドと内通し、戦火から免れていたこと。


 しかも、ファイルド国の物資を買い漁っては、高値でコリンドに売り捌くという謀反行為をこれまで行ってきたのだと。


 この事実が学内で広まったら、……さて、どうなるだろうか?


 確かに、子に罪はないのだけれど。でも、これまで財力で他を圧してきたイメルダの派閥だから、そのしっぺ返しは相当凄まじいものになるだろうなぁとハルコンは思った。


 シルファー先輩はニコリと笑い返してきた。


 ハルコンは侍女セロンの目を通して、先輩と陛下がロスシルドの謀反についても当然話をしていることを知っている。

 また、先輩は、学内でロスシルドの娘が親の威を借りて尊大にふるまうことを、陛下に話していたこともね。


 すると、シルファー先輩の目は、優しげに明るくこう語ってきた。


「私はそんな姑息な手を使って、勝ちを拾うつもりはありませんよ。子供なりのやり方で、きちんと解決したいと思っています」と。


 ハルコンも思わず笑顔になると、「はいっ、お任せしますね、ハルコン!」と彼女も手をひとつ打って、ニッコリ微笑んだ。


 そのやり取りに、ミラを始め他のメンバー達が一斉に注目する。

 だったら私も、ここは正攻法で攻めていかないとね! とハルコンは腹を決めた。


「そこで、私にひとつ提案があります。本日のオリエンテーションで知ったのですが、来月半ばに学内で武闘大会が催されるのだとか。そうですね、ウチのサークルからも大会に参加して、……いっそのこと、優勝しちゃいましょう!」


「「「「「えぇ~っ! ムリだよぉ、ハルコンッ!」」」」」


「んっ、うぅん?」


 あれっ!? 何だろっ? まさか臆病風に吹かれたとか!?


 一方、シルファー先輩とミラは、目を輝かせて俄然ノリ気な様子だ。

 ハルコンとしては、小さな大会での優勝位当然可能と思っているので、兄達男どもの狼狽ぶりが、とても不思議でならなかった。

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